AIスパコンやロボット活用で「稼げる農業」へ、農研機構と東京工科大が連携協定:スマートアグリ(2/2 ページ)
農研機構と東京工科大学は、スマート農業の実装に向け包括連携協定を締結した。深刻化する農業の担い手不足に対し、AIやロボティクスなどの最新技術を活用。持続可能で生産性の高い「稼げる農業」への変革を推進する。
AIスパコンやロボットを駆使する3つの共同研究
先行して着手する共同研究は、畜産/放牧分野を中心とした3つのテーマである。具体的には、「急傾斜放牧地における放牧管理支援システムの開発」「動物行動制御による獣害低減システムの開発」「動物モニタリングとデータ分析による放牧地運用支援」の3課題から取り組みを開始する。
1つ目の「急傾斜放牧地における放牧管理支援システムの開発」は、山間部などの急な斜面を含む放牧地において新たな管理基盤を構築するものだ。従来は人間が見回りなどを担っていたが、これを不整地走行を得意とするロボットや、上空から監視するドローンに置き換えて省人化を図る。東京工科大学がロボットの運動制御技術の提供や設計/製作を担い、農研機構は自身が保有する約130ヘクタールの試験放牧地を実証フィールドとして提供する。さらに、電源インフラがない場所でも運用できるよう、ドローンが自動で充電や電池交換を行えるドローンポートや自律移動型プラットフォームも開発する計画だ。
2つ目の「動物行動制御による獣害低減システムの開発」は、シカなどによる農作物の獣害に対し、動物に過度な負担を掛けない防御手段の構築を目指すものだ。シカが仲間の警戒声に敏感に反応する習性に着目し、音と光の刺激によって動物の行動を制御する方法を検討する。具体的には、ドローンのプロペラ音をチューニングしてシカの反応を調査するほか、シカの視線や動きに合わせてレーザー光の照射をコントロールする仕組みを開発する。実証実験を通じて効果や持続性を検証し、将来的には獣の検出から追跡、誘導までを自動化する制御技術への展開を目指す。
3つ目の「動物モニタリングとデータ分析による放牧地運用支援」では、放牧空間における牛の健康状態の把握と運用管理の効率化に取り組む。具体的には、各種センサーから取得したデータをマルチモーダル解析やAIで評価し、個体の異常や体調不良を早期に検知する技術を開発する。さらに、牛の移動軌跡のデータを基に、集牧作業のプロセスをシミュレーションし、効率的な集牧ルートのモデル化を推進する。こうしたデータ処理やAIモデルの構築には、前述したAIスーパーコンピュータ「青嵐」の演算能力を活用する方針だ。
達成目標としては、2031年度までに放牧管理の省力化により1人当たりの管理面積を現行の1.5倍に拡大し、獣害による牧草地の食害を3割低減させることなどを目指す。
インフラの相互利用や若手育成を通じ「稼げる農業」へ
今後の展望として、両者は共同研究にとどまらず、研究施設やスーパーコンピュータなどインフラの相互利用に取り組む方針だ。また、連携大学院の設立も視野に入れており、将来のスマート農業をけん引する若手技術者の育成にも意欲を示している。
農研機構 理事長の久間和生氏は、「高い食料自給率を目指すとともに、良い経済と安全保障の実現、そして『稼げる農業』に貢献したい」と連携への意気込みを語った。両者はデジタルテクノロジーの農業現場への実装を通じて、持続可能で生産性の高い産業への変革を推し進めていく。
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