非車載強化で農場の工場化を目指すデンソー、ミニトマト自動収穫ロボのすごさ:スマートアグリ(1/2 ページ)
デンソーは農業事業への取り組みと、欧州市場に投入する全自動収穫ロボット「Artemy」に関する説明会を開催した。
デンソーは2024年6月19日、施設園芸大手浅井農園と合弁で設立したアグリッド(三重県いなべ市)の本社およびオンラインで、デンソーの農業事業への取り組みと、欧州市場に投入する全自動収穫ロボット「Artemy」に関する説明会を開催した。
非車載事業強化の一環として食農に挑戦
デンソーでは2023年6月に林新之助氏が代表取締役社長に就任し、新体制として「自動車業界のTier1」から「モビリティ社会のTier1」への移行を目標としている。具体的には、電動化やADAS(先進運転支援システム)などのモビリティの進化、半導体やソフトウェアなどの基盤技術の強化、そしてエネルギーや食農、FAなどの新価値創造の3つへの挑戦を掲げている。
デンソーは2020年にフードバリューチェーン事業推進部を立ち上げ、生産、流通、物流、消費までをつなぐソリューションを提供している。現在、気候変動や就農人口の不足などがグローバルな社会課題になっており、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。これらの課題解決と食料の安定供給に向けて、デンソーが培ってきたモノづくりの技術を生かそうというのだ。
特に生産の領域においては、ビニールハウスやガラス温室を利用した施設園芸において、デンソーのモノづくり技術を融合させた農場の工場化を目指している。デンソー フードバリューチェーン事業推進部担当 経営役員の横尾英博氏は「工場のような高性能なスマート農業ハウスと、その中で動作する機器、システムを提供していく。このアグリッドの農場ハウスも、収穫ロボットや環境制御などさまざまな自動化製品、システムの実証工場の側面もある」と話す。
オランダの施設園芸企業との共同開発第1号
アグリッドに農業ハウスを提供したのが、設立1896年の伝統あるオランダの施設園芸事業者Certhon(セルトン)だ。デンソーは2020年にセルトンと資本提携し、同年に合同でデンソーアグリテッドソリューションズを設立。2023年にはセルトンの全株式を取得し、完全子会社化した。この両社による共同開発の最初の成果が、房取りミニトマトの自動収穫ロボットであるArtemyだ。
Artemyは収穫に関する一連の作業を自動で行うことができる。
収穫に関しては、走行レーン(ハウス内に設置されている温湯管)の上を自動走行しながらAI(人工知能)を活用してミニトマトの塾度判定を行う。走行レーンの移動も、周辺監視技術で通路内の障害物と移動先の走行レーンを認識し、無軌道でも隣接する走行レーンへ安全かつ正確に自動で移動する。
満載になった収穫箱は自動で入れ替えることができ、積載している6つの収穫箱が全て満載になると、空の収穫箱が置いてある台車まで自動で移動し、収穫箱全てを自動で入れ替える。
駆動源はホンダ製の交換式バッテリーを採用しており、充電のための待機時間が必要ない。房検出LEDと果柄検出LEDを搭載することで、昼間の直射日光環境下や、夜間の補光環境下でもミニトマトの収穫精度が向上し、昼夜の自動収穫も可能だ。Artemyの名前はギリシャ神話のアルテミスに由来している。
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