検索
インタビュー

ファンに愛され続けるため、ガンプラ材料は挑戦の連続素材で進化する製品(1)(3/3 ページ)

本連載では、コンシューマー向けにロングセラー商品を展開する企業に、同商品における材料の変化やその背景、材料選定に対する考え、今後の展開などをインタビューし、紹介する。第1回ではBANDAI SPIRITSの取り組みを取り上げる。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

ガンプラ材料選定に対する考え

MONOist ガンプラの材料選定に対する考えについて教えてください。

松橋幸男氏(以下、松橋氏) 材料選定で重要視している点は、アニメのガンダムシリーズに登場するモビルスーツ(ロボット)の動きを再現できることや、ファンがイメージしている各モビルスーツのパーツや武器などの質感を具現化することだ。

BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 兼 クリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏
BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 兼 クリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏

 質感の具現化では、硬さや透明性、光沢性など、さまざまな観点で、各モビルスーツのパーツやイメージに合った素材を選んでいる。

 一方、ガンプラの原料であるプラスチックは、当社のためだけにプラスチックメーカーが開発や製造を行っているわけではない。そのためガンプラの開発担当者は、自動車や家電機器などに採用されている新たなプラスチックなどを見て、採用するケースもある。つまり、開発現場では、「あのプラスチックを使ったら、ガンプラでより優れた表現ができるのではないか」といった議論が起きている。

 加えて、BANDAI SPIRITSのプラモデルは、コストや生産性、安定性よりも、ユーザーの期待に応える素材選定を心掛けている。そのため、ガンプラの開発や製造の現場はとても苦労する。しかし、その期待に45年以上応えてきた結果、ガンプラの開発や製造の現場では、素材などに関するさまざまな技術が完成した。

MONOist 近年、ガンプラでは環境に配慮した材料の活用や取り組みが行われていますが、事例を交えてこれらに対する考えも教えてください。

松橋氏 近年、一般消費者も環境にやさしい製品や活動への関心が高い。そのため、ガンプラが愛され続けるためにも環境配慮の取り組みが必要だと考えている。特にユーザー一体型でのサステナブル活動に力を入れている。

 一例を挙げると、2021年4月1日にスタートした「ガンプラリサイクルプロジェクト」がある。同プロジェクトは、バンダイナムコグループのBANDAI SPIRITS、バンダイナムコアミューズメント、バンダイロジパル、バンダイナムコホールディングスの4社が、ガンプラのランナー(プラモデルの枠の部分)を回収し、ランナーをケミカルリサイクルした原料でプラモデルの製品化を目指す計画だ。

「ガンプラリサイクルプロジェクト」のイメージ
「ガンプラリサイクルプロジェクト」のイメージ[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS、(C)創通・サンライズ

 全国の「namco」をはじめとするバンダイナムコアミューズメントの直営アミューズメント施設に専用の回収ボックスを設置し、顧客から使用済みランナーを回収した。2021年4月〜2025年3月で、累計約117トンの使用済みランナーを回収している。

 2025年2月には、当社とPSジャパンが共同で、使用済みランナーをケミカルリサイクルした樹脂を原料の一部として活用したガンプラ「EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム(EX-001 グラスフェザー装備)ケミカルリサイクルVer.」を実用化した。

「EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム(EX-001 グラスフェザー装備)ケミカルリサイクルVer.」
「EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム(EX-001 グラスフェザー装備)ケミカルリサイクルVer.」[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS、(C)創通・サンライズ

 具体的には、BANDAI SPIRITSが顧客から回収したガンプラの使用済みランナーを、PSジャパンがその他の使用済みポリスチレンなどと併せてモノマー化/ケミカルリサイクルし、プラモデルの原料としてBANDAI SPIRITSが購入して、RX-78F00/E ガンダムの原料で用いた。1商品当たり、重量ベースで44%のケミカルリサイクルプラスチックを使用している。

 加えて、商品の一部あるいは全体にリサイクル素材を使用したプラモデル「エコプラ」でも使用済みランナーを活用している。エコプラは、リサイクル材を使用することで本体の色に個体差があるプラモデルだ。リサイクル材として、プラモデルの成形時に生じる不要部分をマテリアルリサイクルしたモノも使われている。

 また、当社では、伊藤園と連携し、緑茶飲料の製造工程で排出される茶殻をアップサイクルし配合した樹脂を使用したガンプラを商品化したり、デンカとともに、天然素材の卵殻とPSを配合したサステナブルプラスチック「PLATIECO」を開発し、ガンプラ「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム [クラシックカラー]」の材料で採用したりと、環境配慮材料の活用も進めている。

「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム [クラシックカラー]」
「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム [クラシックカラー]」[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS、(C)創通・サンライズ

 ガンプラでこういった材料を採用する背景には、素材メーカーから「環境にやさしい素材を開発しても、認知拡大が難しい」という多くの声を聞いていることがある。当社が他社に先駆けて、ガンプラにこういった材料を採用することで、さまざまな企業や一般消費者に環境にやさしい素材を知ってもらい、採用が広がってほしいと考えている。

MONOist 今後の展開について教えてください。

脇田氏 現状よりも2倍速くガンプラを製造できる原料の開発を視野に入れている。さらに、これまで収集した情報をまとめたビッグデータやAI(人工知能)を用いて、生産ラインの解析なども行いたいと考えている。

松橋氏 今後も多面的なアプローチでガンプラをよくしていきたい。材料や設計、使用する金型、二次加工など全てで改善できる点を探し、改良して消費者によりよいガンプラを届けていく。


右から、今回の取材に応じてもらったホビーディビジョン ホビーマーケティング部 兼 ホビークリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏、ホビーディビジョン ホビークリエイション部 生産戦略チーム マネージャーの脇田敏之氏、ホビーディビジョン ホビークリエイション部 設計第一チーム マイスターの高尾典弘氏

⇒その他の「素材で進化する製品」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る