ソフトウェアデファインド×オープン化は製造現場を変えるのか:MONOist 2026年展望(2/2 ページ)
近年、製造業でも「ソフトウェアデファインド」という言葉が定着しつつある。制御や機能をハードウェアから切り離し、ソフトウェアで定義するという考え方だ。そして、分離されたソフトウェアは、外部とつながる「オープン化」によってさらなる拡張性を獲得する。ソフトウェアデファインド×オープン化の流れを考察する。
コントローラーは専用ハードからプラットフォームへ
既にロボットコントローラーは、今後のさらなるセンサーやビジョン、AIの活用を視野に入れて、ソフトウェアプラットフォームへと変化しつつある。その過程で、制御や開発環境のオープン化が具体的な動きとして表れ始めており、「2025国際ロボット展」(2025年12月3〜6日、東京ビッグサイト)では国内のロボットメーカーのオープン化の動きが目立った。
ファナックはNVIDIAと協業し、NVIDIA Omniverseライブラリを基盤とするオープンソースのロボットシミュレーション用プラットフォーム「NVIDIA Isaac Sim」に対応。ファナックのロボットシミュレーションソフト「ROBOGUIDE」とIsaac Simを統合させ、実機と同じアルゴリズムを使ったロボット動作をIsaac Sim上で再現できるようになった。
また、ファナックはオープンソースのロボット開発プラットフォームであるROS 2でファナックのロボットを駆動させる専用ドライバをGitHubに公開。オープンプラットフォーム対応を急速に進め、注目を集めるフィジカルAIの実装を加速させようとしている。
さらに会場では、ロボットコントローラーに内蔵したCODESYSのソフトPLC機能を使ったデモを披露した。
川崎重工業も、会場で次世代オープンコントローラーの構想を披露した。グローバルに使われている産業用ネットワークEtherCATを通信に採用し、1つのコントローラーでEtherCATに対応したさまざま機器を同期制御する。制御ソフトウェア「TwinCAT」などベッコフオートメーションの製品や技術も利用可能になる。
川崎重工は以前からクラウドプラットフォーム「ROBOCROSS」によるアプリケーションのオープン化も図っており、現場で課題となっているシステムエンジニアリング(SI)の効率化に向けた「SI効率化と多彩なロボットシステムの創出を実現する共創基盤開発」にもNTTビジネスソリューションズやダイヘンら7社と取り組んでいる。エッジ(コントローラー)とクラウド(ROBOCROSS)の両輪で、今後活用が広がるAIアプリケーションを見据えたオープンかつスケーラブルなロボット活用を目指している。
ロボットのオープン化に関しては、デンソーウェーブが2019年にベッコフオートメーションと共同開発したロボットコントローラー「RC9」を投入している。もちろん、ファナックや川崎重工は何年もかけて準備してきただろうが、2025年の動きは“オープン化第2幕”とも見ることができる。
ハード対ソフトの対立ではなく……目指すは“最適解”
これらの動きを制御の中核であるPLCの視点から捉え直すと、オムロンでPLCを中心とした工場自動化機器に関わった岡実氏はMONOistでの連載「PLCの現在 過去 未来」の最終回『これからのPLC〜「PLC Anywhere」の時代へ〜』の中で、「PLC Anywhere」という言葉を使って次世代のPLC像を展望した。
岡氏の言葉を借りれば、「PLC Anywhere」とはPLCという“機能”がどこでも使えるようになる世界だ。その実現に向けて、PLCの制御エンジンをハードウェアから分離する「仮想化」技術が「PLC Anywhere」を実現するコア技術になり、「PLCの頭脳はソフトウェアである」という考え方が基本になるとしている。
PLC Anywhereはつまりソフト対ハードという単純な構造ではなく、PLCの機能をハードから解き放ち、最適な場所から、最適な機能を、最適な規模や形で製造現場に提供できるようにするものともいえるだろう。
AIをはじめとする著しい技術の進歩に対して、ハードウェアと一体となった個社のクローズな開発環境は限界を迎えている。拡張性をもたらすソフトウェアデファインドおよびオープン化の流れはますます加速していくとみられる。
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