東芝とAI、ソフトウェアデファインド、そして量子:IIFES2025(1/2 ページ)
本稿では、「IIFES 2025」において東芝 代表取締役社長 執行役員 CEOの島田太郎氏が行った基調講演の模様を一部紹介する。
オートメーションと計測の先端技術総合展「IIFE2025」が2025年11月19〜21日、東京ビッグサイトで開催された。会場内には各社が主力製品を出展した他、各種セミナーが多数行われた。
本稿では、東芝 代表取締役社長 執行役員 CEOの島田太郎氏が『「人と、地球の、明日のために。」東芝が描く成長戦略とAIで変わるものづくりの未来』をテーマに行った基調講演の一部を紹介する。
東芝が進めるソフトウェアデファインド
東芝グループの経営理念である「人と、地球の、明日のために」という言葉について、島田氏は「私自身大変好きな言葉だ。この言葉には無限の広がりがある」と述べた。そして、この言葉は東芝がビジネス領域を特定しない会社であることを体現しており、世の中にない新しいものを作り出し、人、地球の未来のために、貢献していくことが同社の根底にある、とした。
東芝は2025年に創業150周年を迎えている。創業以来、同社は世界最先端の製品を開発、提供してきた。例えば国内で先駆けて電気洗濯機、電気冷蔵庫を完成させた他、同じく日本語ワープロ、ラップトップPC、最近では320列エリアディテクターCTスキャナーの開発など幅広い分野で数多くの新製品を世の中に送りだした。
1975年には創業100周年記念事業としてデジタルコントローラーを発売。150周年に当たる2025年にはPLC(プログラマブルロジックコントローラー)の世界をクラウドへ導こうとしている。コントローラーのソフトウェア化そしてクラウド化に同社はコミットしており、クラウド型PLCの時代が来ると期待される。
この取り組みには重要な意味がある。現在のAI(人工知能)の進展を鑑みると、データを取得しない製造業は勝ち残ることはできないと考えられる。競争に勝ち抜くためにはデータの収集、クラウド化などにより、データを整理してAIが使えるようにすることが重要になる。
AIの進化は著しく、産業構造は大きく変化している。そうした時代において島田氏は、新しいものを作るために特定の領域だけではなく、幅広い領域に対して知見を集めて、提供していくことを重要視しているという。
データの重要性が高まるにつれて、ハードウェアも変化していく必要がある。これを「Software Defined Transformation(ソフトウェアデファインドトランスフォーメーション)」と呼んでおり、現在の自動車業界の変革を見れば説明がつくという。
現在は製品の内部、ハードウェアの中にソフトウェアをインストールする形となっている。これがソフトウェアデファインド化により、ソフトウェアとハードウェアが分離される。ソフトウェアでハードウェアを包み込むようにすると、外側から汎用的なAPI(Application Programming Interface)でデータをつなぐことができる。他社のハードウェアでも対応できるようなプラットフォームを構築していくことが必要となる。さらにデータ量が圧倒的に大きくなった世界においては、QX(Quantum Transformation/量子によるトランスフォーメーション)を目指す。
同社のAIやソフトウェアデファインドの取り組みを具体的に見ると、QR乗車券を活用した交通チケットオープン化プラットフォーム「どこチケ」がある。
どこチケは、「QR乗車券システム」と「乗車券オープン化サービス」を組み合わせたプラットフォームだ。SaaS型のQR乗車券システムで、交通乗車券をデジタルQR乗車券として発行できるようにし、どこチケのプラットフォーム上で管理、オープン化。交通事業者だけでなく、それ以外の事業者でも、自由に自社のサービスとQR乗車券を組み合わせた企画が可能になる。
また、電子レシートがスマートフォンに届くレシート管理アプリ「スマートレシート」は、2025年に会員数270万人を突破している。レシートには、さまざまな情報が含まれている。これを独自のAI技術により、付加価値の高い購買データの提供につなげる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
