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東芝とAI、ソフトウェアデファインド、そして量子IIFES2025(2/2 ページ)

本稿では、「IIFES 2025」において東芝 代表取締役社長 執行役員 CEOの島田太郎氏が行った基調講演の模様を一部紹介する。

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AI、エネルギー、そして量子技術へ

 話題を集めるAIだが、大量に電力消費するためAIに使う電力が足りなくなるという課題もある。東京電力管内でも、大量の電力をデータセンターで使いたいとする申し込みが既に入っているといわれる。

 そこでカーボンニュートラルの取り組みが重要となる。東芝としても省エネ、再エネによるCO2削減や、CO2を分離/回収して地下に貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)、発電所や化学工場などから排出されたCO2を他の気体から分離して活用するCCU(Carbon Capture and Utilization)、大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)なども提案している。島田氏は「エネルギーが最も有効に利用できるようなサイクルを作っていきたい」とする。

 LLM(大規模言語モデル)を取り巻く世界経済の状況を見ると、2017年にGoogleが自然言語処理に関する論文を発表してから、2022年にOpenAIがGPT-3.5(ChatGPT)をリリースし、2025年には新たなAIインフラストラクチャ構築に向けたスターゲートプロジェクトが米国で発表されるなど、わずか8年足らずで驚異的な経済規模に成長した。

 こうした動きが量子の世界でも起こりつつあるという。2019年10月にGoogleが量子超越性を発表。それを契機に、「量子コンピュータはファンタジーやサイエンスフィクションではない。出来上がったらそれを持つ国が世界を支配してしまう」ということで、世界各地で量子の産業化やエコシステム強化を目指す団体や枠組みが誕生した。

 日本では量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)が2021年に設立され、島田氏が代表理事を務めている。2030年には1000万人が意識しない間に量子技術を使っているようにすることを政府に提案し、産業化競争に参入している。

 量子コンピュータの技術開発は黎明期といわれているが、予測よりもはるかに進歩は早く、量子ビット数や誤り訂正技術の進化により、利用できる論理量子ビット数に焦点が移り開発が進んでいる。

 なお、量子ビットを実現する方法は現在複数考案されている。超伝導方式やイオントラップ方式、半導体方式、光方式、中性原子方式などで、超伝導方式は超伝導状態の電子回路に対して、マイクロ波などを用いて計算を行う。イオントラップはイオンを真空中に閉じ込め、レーザー光を用いて計算する。

 島田氏は「(量子コンピュータは)AIの進歩が急激に加速していた世界を、もう一度見ているようだ」と評する。日本においても量子コンピュータ技術は進歩しており、現在も利用可能な量子技術が存在する。イジング型(量子アニーリング型)などの技術はすでに、物流、製造、金融、医療、量子暗号通信などの分野で実用化が進んでいる。

 東芝も創薬バイオベンチャーと戦略的な提携を行い、量子インスパイアード最適化ソリューションである「SQBM+」を創薬分野に活用。創薬ターゲットとなるタンパク質の枯渇課題を解決するため、アロステリック制御部位を計算で予測するプロセスにSQBM+を適用するなど新薬創出に貢献している。

 また、Q-STARでは未来社会を想定したさまざまなユースケースを検討している。検討事例としては大規模リアルタイム交通シミュレーションや経路/信号制御の最適化(移動時間短縮や環境負荷の大幅低減)などがある。

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