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新車生産が3カ月連続で前年を下回る、トランプ関税とネクスペリア問題が影響自動車メーカー生産動向(1/3 ページ)

2025年10月の日系自動車メーカーの世界生産台数は、トヨタ自動車とスズキ、ダイハツ工業以外が前年割れとなり、8社の世界生産合計は3カ月連続で前年実績を下回った。トランプ関税による影響を回避するための動きが見られたことやネクスペリアの半導体供給停止問題による生産調整も減産につながった。

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 2025年10月の日系自動車メーカーの世界生産台数は、トヨタ自動車とスズキ、ダイハツ工業以外が前年割れとなり、8社の世界生産合計は3カ月連続で前年実績を下回った。国内/海外ともに前年割れとなった。トランプ関税による影響を回避するための動きが見られたことが一因となった。さらに、オランダの中国系半導体メーカーであるネクスペリアの半導体供給停止問題による生産調整も減産につながった。ただ、ネクスペリアの半導体供給が再開された他、「Japan Mobility Show 2025」に合わせて投入した新型車効果などにより、今後は回復基調に転じることも期待される。

⇒「自動車メーカー生産動向」のバックナンバーはこちら

 10月の8社合計の世界生産台数は、前年同月比1.5%減の222万7509台と前年実績を下回った。このうち海外生産は、同2.2%減の145万1437台と2カ月ぶりに減少した。前年越えはトヨタ、スズキ、日産自動車の3社だった。地域別では、北米が同4.3%減の50万5351台と5カ月ぶりのマイナス。回復基調を見せていた中国も同0.1%減の26万6662台とわずかながら前年を下回り2カ月ぶりに減少した。

 国内生産も伸び悩み、8社合計は前年同月比0.2%減の77万6072台と2カ月連続のマイナス。トヨタ、ダイハツ、マツダ、三菱自動車の4社は前年実績を上回ったものの、大幅減の日産とSUBARU(スバル)が全体を押し下げる結果となった。

2025年10月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 326,832 600,155 215,102 132,834 926,987
6.8 2.2 15.6 ▲ 6.4 3.8
スズキ 92,346 212,571 - - 304,917
▲ 1.3 9.5 - - 6.0
ホンダ 63,662 239,009 134,454 59,229 302,671
▲ 3.6 ▲ 12.6 ▲ 14.0 ▲ 3.7 ▲ 10.9
日産 52,053 224,270 103,823 65,413 276,323
▲ 19.3 0.6 ▲ 12.1 25.9 ▲ 3.9
ダイハツ 80,866 73,054 - - 153,920
4.8 ▲ 1.2 - - 1.9
マツダ 69,506 39,900 24,967 9,186 109,406
1.2 ▲ 15.4 ▲ 21.8 ▲ 11.6 ▲ 5.5
三菱自 47,110 35,473 - - 82,583
11.4 ▲ 21.0 - - ▲ 5.3
スバル 43,697 27,005 27,005 - 70,702
▲ 27.4 ▲ 24.7 ▲ 24.7 - ▲ 26.4
合計 776,072 1,451,437 505,351 266,662 2,227,509
▲ 0.2 ▲ 2.2 ▲ 4.3 ▲ 0.1 ▲ 1.5
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの10月の世界生産台数は、前年同月比3.8%増の92万6987台と5カ月連続のプラスで、10月として過去最高を更新した。このうち国内生産は、同6.8%増の32万6832台と3カ月連続で前年実績を上回った。国内市場向け新型車の好調に加え、北米や中国、オセアニア、アフリカなど向けの輸出が大きく伸長。輸出は同13.6%増の19万8019台と10カ月連続で増加した。

 海外生産も、前年同月比2.2%増の60万155台と9カ月連続で前年実績を上回った。地域別で見ると、主要市場の北米は、同15.6%増の21万5102台と2桁%増を記録し、9カ月連続のプラス。内訳は米国が同26.4%増の13万7262台、メキシコが同4.3%増の2万8273台と増加したものの、カナダは同1.5%減の4万9567台だった。「カムリ」や「RAV4」などHEV(ハイブリッド車)が堅調の他、前年にリコールで生産を止めていたレクサスブランドの「TX」や「グランドハイランダー」の反動増も発生した。一方、中国は同6.4%減の13万2834台と2カ月ぶりにマイナスへ転じた。新型EV(電気自動車)「bZ3X」は好調だったが、代替え補助金策が打ち切りとなった地域が拡大した他、新たな政策を期待して様子見する動きもあったという。

 中国以外のアジアは、ローン審査の厳格化や追加課税などにより市況が厳しいインドネシアが前年同月比5.0%減の2万3225台と伸び悩んだ。ただ、主力拠点のタイはローン審査の厳格化の影響はあるものの、新型「ヤリスエイティブ」のHEVが好調で同22.1%増の5万2529台と大きく回復した。インドも「イノーバハイクロス」や「アーバンクルーザーハイランダー」などの人気が続いていることに加えて、新税率による自動車関連税制の引き下げが販売を後押しし、同14.1%増の3万1610台と増加した。これらの好調が中国の落ち込みをカバーし、アジアトータルでは同1.5%増の27万2844台と2カ月連続で前年実績を上回った。欧州は、トルコが同14.3%減の2万557台と低迷し、欧州全体でも同2.2%減の7万8776台と2カ月ぶりに減少した。

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