なぜフィジカルAIの象徴がヒューマノイドなのか@2025国際ロボット展:2025国際ロボット展レポート(後編)(1/3 ページ)
「2025国際ロボット展(iREX2025)」では、ヒューマノイドがこれまでになく注目を集めた。本稿では前後編の2回にわたって、会場横断でヒューマノイドの動向をレポートする。前編では中国勢を中心に紹介した。今回の後編では、日本勢の動向にスポットを当てる。
世界最大級の産業用ロボット見本市「2025国際ロボット展(iREX2025)」(2025年12月3〜6日、東京ビッグサイト)において、これまでになく注目を集めたのが「ヒューマノイドロボット」(ヒト型ロボット、以下ヒューマノイド)だ。特に中国を中心としたヒューマノイドメーカーが数多く出展し、さまざまなデモンストレーションで来場者の関心を呼んだ。
本稿では前後編の2回にわたって、ヒューマノイドにフォーカスし、会場全体を横断して取り上げている。前編では主に中国勢の動向を取り上げた。後編では、日本勢の動きに焦点を当てる。まず「日本企業も負けてはいない」と、あえて言いたい。
川崎重工、安川電機、カワダ……日本企業も負けてはいない
川崎重工業はヒューマノイド「RHP Kaleido(カレイド)」の9世代目を紹介した。工場、家庭、そして災害現場をイメージした空間でデモを行い、今回も人垣を作った。Kaleidoは、初お披露目だった「iREX2017」以降の国際ロボット展のシンボル的展示の1つとなっている。
川崎重工業のブース内ではKaleidoの他、「RHP Friends」による生成AI(人工知能)を使った対話デモ、汎用セミヒューマノイド「Nyokkey」、そしてNyokkeyをベースにして台湾のFOXCONN(鴻海精密工業)と共同開発したナース補助ロボット「Nurabot」なども紹介されていた。Nurabotは、NVIDIAからも紹介されて話題になったことは記憶に新しい。
川田グループのロボット企業カワダロボティクスは、15年以上前から展開している製造業向けのセミヒューマノイド「NEXTAGE」を今回も出展し、連携デモなどを紹介していた。小物の箱詰めなどは同社がいつも行っているデモだが、一周回って新たなプレイヤーたちから注目されているようだ。
川田グループは今回、慶応義塾大学 野崎研究室の「リアルハプティクス」技術との連携、東京大学 松尾研究室とロボット基盤モデル構築のための動作データ収集プラットフォームとの連携デモなども合わせて紹介していた。
なお、川田グループは自社の現場をフィールドとして「人と一緒に働く全身型ヒューマノイドロボット」の開発に取り組むことを発表している。リリースを見ると学術界からもそうそうたる面々が取り組むようなので、今後に注目している。
NEXTAGEはパートナーであるTHKブースでもデモ展示されていたが、それ以外でも、いくつかの他社ブースでデモを行っていた。「日本はヒューマノイドへの取り組みが遅れている」と言われがちだ。確かに、シミュレーションとの誤差が少ない低減速比のQDD(準ダイレクトドライブ)モーターと強化学習などを組み合わせた最近のヒューマノイド開発に対しては出遅れている。
しかし、NEXTAGEは既に生産現場に入って10年以上の実績がある。双腕であること、人型ならではの現場受容性の高さなどの利点もあるようだ。その活用ノウハウは今後のアドバンテージとすることができるはずだ。
安川電機のブースではメイン展示である変種変量生産対応セルのデモの横で、セミヒューマノイドの「Torobo」がテーブル上の台拭きなどを行っていた。Toroboは、スタートアップの東京ロボティクスが開発した全軸力制御ができるセミヒューマノイドだ。なお、安川電機は2025年7月1日付で東京ロボティクスを完全子会社化している。
今回のデモは、ソフトバンクの「AI-RAN」とビルの設備情報や備品情報を把握している次世代のビル管理システムをロボットに連携させたというもの。MEC(Multi-access Edge Computing)上で動作するAIがロボットに指示を出すことで、タスクに柔軟に対応できるようにする。ロボットはタスクプランナーとしてのVLMで生成された指示を、安川電機側が開発したVLAに入力して、生成された動作で動いていた。
また、新しい自律双腕ロボット「MOTOMAN NEXT-NHC10DE」と模倣学習、強化学習を使った梱包のデモも行われていた。NVIDIAのIsaac SimとIsaac Labを活用したものだ。これも広義のヒューマノイドとして紹介しておく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.