可能性の中国勢/信頼性の日本勢〜ヒューマノイドの現在地@2025国際ロボット展:2025国際ロボット展レポート(前編)(1/4 ページ)
「2025国際ロボット展(iREX2025)」では、ヒューマノイドロボットがこれまでになく注目を集めた。Unitreeをはじめとする中国勢を中心に、多様なヒューマノイドやセミヒューマノイドが展示され、開発基盤やデータ収集用途としての活用も広がりを見せている。本稿では前編として、海外勢のヒューマノイド動向を会場横断で整理する。
世界最大級の産業用ロボット見本市「2025国際ロボット展(iREX2025)」が2025年12月3〜6日、東京ビッグサイトで開催された。
テーマは「ロボティクスがもたらす持続可能な社会」。出展者数は673社/団体となり、海外からは過去最大規模の140社/団体が参加した。累計来場者数は15万6110人に上った。東京ビッグサイトの東ホールが一部改修中で小間数そのものは減少した(=会場面積は狭くなった)こともあり、入場者数が4万7464人を数えた12月5日(金曜)の会場は特に混雑した。
大手産業用ロボットメーカーは既存のソリューションに加えて新型の協働ロボットや、少量多品種に対応するためのAI(人工知能)活用ソリューションを提案し、「フィジカルAI」という言葉を掲げて黒山の人だかりをつくっていた。
もう1つ今回の国際ロボット展で多くの注目を集めていたのは、「ヒューマノイドロボット」(ヒト型ロボット)である。残念ながら米国勢は来なかったものの、特に中国を中心としたヒューマノイドメーカーが多く出展して注目された。
各ブースについてはMONOistでも個別レポート記事が既に公開されているが、いま一度、ヒューマノイドロボットにフォーカスし、前後編の2回にわたって会場全体を横断して眺めてみたい。今回の前編では中国を中心とする海外勢の様子を紹介し、後編では日本勢の動きを取り上げる。
前提として、「国際ロボット展」の主催は日本ロボット工業会であり、あくまで生産技術の展示会である。一方、今回出展していたあるスタートアップのCEOは「展示会は唯一、未来を売ることができる場所だ」と語っていた。未来の生産現場の姿を提案できる場所が、展示会だというわけである。
実際、今回の来場者について「会社の中で未来戦略を担当する人たちが多いように感じる」という声を複数の企業ブースで聞いた。「国際ロボット展」に来場する思惑は人それぞれだが、「未来を考える場所」としての役割も少なからずあるのは確かだ。
そんな中、「何に使えるかも分からない未熟な技術」を披露して積極的に日本国内にも乗り出そうとする海外勢の図太さが目立つ一方で、従来の延長線上にある手堅い技術を地道にアピールする日本勢が保守的に見えたのは仕方ないのかもしれない――というと、言い過ぎだろうか。
開発基盤として存在感を高めるUnitree G1
会場の各所で目立ったのが中国Unitreeのヒューマノイド「G1」を使ったデモだ。インターネット上の動画でもおなじみのG1だが、今回、代理店のTechShareのブースで行われたキックボクシングやダンスを見て「初めて実機の動きを見た」という来場者も多かったようだ。
TechShareブースの床面はタイルを敷き詰めていたもので凹凸もあり、ロボットの足裏はしばしば完全に浮いていた。何に使えるかはさておき、それでも全く転倒しない制御技術を、多くの人が驚きを持って見つめていた。
全高130cmのG1より、さらに小型のモデルである「R1」も時折、簡単なデモを行っていた。販売は2026年春以降になるようだ。
TechShareではG1のほか、会期中に到着したばかりの新製品「Unitree G1-D」も出展した。「G1-D」は、車輪型のセミヒューマノイドで、作業のほか、基盤モデル用のデータ収集などに使われると見られている。
この他、「H1」の改良型の「H1-2」、そして「H2」も静展示されていた。TechShareは代理店ではあるが、2025年12月に自社開催の技術交流イベント「Robot Innovation Week 2025」を行うなど、積極的にロボット市場の拡大につとめている。
西ホールではもう1つ、中国のNoitom RoboticsがモーションキャプチャーのデモにG1を使用していた。さすがに床面では時々ドリフトするものの、歩いたり走ったり、さらにはジャンプまで低遅延で追従できることを実演した。少し前ならありえない風景である。
Noitomはモーションキャプチャーデバイス出荷量で世界シェア大手になっている。すぐ隣のVIVE Robotics(VR(仮想現実)のHTC VIVEによるロボットデータ収集企業)のブースでは、同じく中国企業のPNDboticsのヒューマノイド「Adam-U」を使ったデモが行われていたが、そのデータもNoitomのスーツやプラットフォームを使って取得されたものだ。
なおブースでは手指のデモは行っていなかったが、その取得もできるとのことだった。既に日本語のWebサイトも用意されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.