検索
特集

可能性の中国勢/信頼性の日本勢〜ヒューマノイドの現在地@2025国際ロボット展2025国際ロボット展レポート(前編)(3/4 ページ)

「2025国際ロボット展(iREX2025)」では、ヒューマノイドロボットがこれまでになく注目を集めた。Unitreeをはじめとする中国勢を中心に、多様なヒューマノイドやセミヒューマノイドが展示され、開発基盤やデータ収集用途としての活用も広がりを見せている。本稿では前編として、海外勢のヒューマノイド動向を会場横断で整理する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

車輪を持つセミヒューマノイドも多数登場

HITBOTのセミヒューマノイド
HITBOTのセミヒューマノイド[クリックで拡大]

 展示会場で特に多かったのは脚部が車輪型の、いわゆる「セミヒューマノイド」だ。

 多くのセミヒューマノイドが「下半身」相当部分にも可動アームを採用し、床上の物体から高所の棚にある物体まで手が届くよう設計されている。工場や倉庫などでの実証実験や、上半身の動作データ収集にはもっぱらセミヒューマノイドが使われている。

 こちらでも代表例はAgiBotだ。技術商社の山善は、スタートアップのINSOL-HIGHと進める動作データ収集センターにAgibotのセミヒューマノイド「G1」を50台単位で導入し、INSOL-HIGHの「REAaLプラットフォーム」を使ってフィジカルAI開発のためのデータ収集と学習を進めることを発表している。

 今回のブースでも全面的にそれをアピールしたものになっており、派手な照明のブースでAgibotがピック&プレースを続けるデモを見せていた。図らずも照明環境が大幅に違っていても、ある程度問題なく動作することを示すものとなっていた。

山善ブースでのAgiBot「G1」のデモ[クリックで再生]

 なおAgiBotのG1を使った同様のデモは、岡谷鋼機と新エフエイコムのブースでも見られた。こちらでも同じく物流自動化ソリューション、つまりピック&プレースを行っていた。具体的にどのようなビジネスへとつなげていくかは、さまざまな可能性を視野に入れて探りつつも「まだ検討中」とのことだった。

岡谷鋼機と新エフエイコムのブースにもAgibot「G1」
岡谷鋼機と新エフエイコムのブースにもAgiBotのG1[クリックで拡大]

 日本国内で、ロボット動作データ収集センターの構築を目指している企業は他にもある。RealMan Robotics(中国本社名はRealMan Intelligent Technology)は、新型のセミヒューマノイド「RealBot」をブースに出展していた。

 超軽量の協働型ロボットアームで知られる同社は、日本ではスタートアップのForcesteed Roboticsと組んでフィジカルAI関連事業を進めようとしている。こちらも50台単位でロボットをそろえ、客先での動作データ収集を行う予定とのことだ。

 なお、RealManの技術力は業界では知られており「実はあそこの会社のロボットはRealManのOEM」という例もいくつかあるという。

RealMan Roboticsの「RealBot」[クリックで再生]

 国産ロボットでロボットデータ収集を行おうとしているのがスタートアップのugoである。ugoは「AIロボット向け模倣学習キット」を2025年10月に発表した。

 セミヒューマノイドの「ugo Pro R&Dモデル」と、オープンソースの模倣学習フレームワーク「LeRobot」に対応したソフトウェアライブラリなどで構成された開発者向けパッケージで、今回このロボットが、GMOブースに登場していた。

AIロボット向け模倣学習用の「ugo Pro R&Dモデル」
AIロボット向け模倣学習用の「ugo Pro R&Dモデル」[クリックで拡大]

 セミヒューマノイドの話に戻すが、中国のGalbotも注目企業の1つだ。2025年には220億円を調達したことで知られるGalbotは「大脳」領域に注力しており、ハードウェアに注力するRealManとは対称的である。

 Galbotは、今はまだ基本的な作業に注力すべきだと考え、基礎的なピック&プレースだけにフォーカスして取り組んでおり、中国では既にロボットを使った24時間無人運営のロボット薬局サービスをローンチしている。日本市場進出にも積極的な意欲を示し、各展示会に登場し始めている。

Galbotの小売り向けソリューション[クリックで再生]

 日本ではファミリーレストランの「猫ロボット」として親しまれている「BellaBot」の開発元、中国Pudu Roboticsのヒューマノイドロボット「D9」と、セミヒューマノイド「FlashBot Arm」も出展された。ただし残念ながら静展示だった。

 Pudu Roboticsは世界60カ国以上で累計出荷台数10万台を超すサービスロボット業界のフロントランナーである。既に製品化されている配膳ロボットや清掃ロボットなどと違い、ヒューマノイドはまだまだ製品化には時間がかかると見ているとのことだった。

Pudu Roboticsの「FlashBot Arm」と「D9」
Pudu Roboticsの「FlashBot Arm」と「D9」[クリックで拡大]

 産業用3Dカメラの中国Mech-Mindも、セミヒューマノイドを使ってレジカウンターの自動化を想定したデモを行った。ロボット自体は中国Standard Robotsの「DARWIN」である。このほか双腕ロボットによるTシャツ畳みなど、フィジカルAI研究開発でおなじみのデモも紹介していた。

会場で披露したATROのデモンストレーション[クリックで再生]

 AMR(自律搬送ロボット)企業の中国Youibot Roboticsもセミヒューマノイドによるデモを紹介。ロボットの前で手を振るとコーヒーをいれてくれた。なおYouibotの主力製品はAMRであり、ヒューマノイドロボットはあくまで客寄せとして捉えているようだった。同社は日本法人もある。

Youibot Roboticsのセミヒューマノイド[クリックで再生]

 協働ロボットの中国ROKAEも、セミヒューマノイド「Helios」などを出展し、文字を書くデモを行っていた。

ROKAEのセミヒューマノイド「Helios」ン[クリックで再生]

 中国企業各社は国際ロボット展でのブースの大きさこそ小さかったものの、日本のスタートアップとは桁が違う資金を集めて事業を展開している。社員数も数百人規模で、しかもまだまだ急激に成長中だ。国内展示会のブースでのデモだけでは、企業のポテンシャルはなかなか計り難い。

 今回のデモでは地道なものが多かったが、公開されている動画の中には、より実践的なものも見られるようになりつつある。日本市場の魅力が高まれば、展示会でも大規模なデモブースを構えてくれるかもしれない。

 中国勢だけではない。ドイツのFranka RoboticsとAgile Robotsも共同でブースを出展し、双腕ロボットとAIを使ったさまざまな動作デモを紹介していた。

Franka Roboticsによる双腕ロボットを使ったデモ[クリックで再生]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る