AIの定着進むも、6割が「サイレント活用」で7割の職場でルール未整備:キャリアニュース
SHEが、日常生活および職場での生成AI活用の実態に関する調査結果を発表した。7割の職場でルールが未整備の中、AI活用を公言しない「サイレント活用」が6割を占め、AIの日常インフラ化がうかがえる結果となった。
SHEは2025年12月11日、日常生活および職場での生成AI(人工知能)活用の実態に関する調査結果を発表した。
同調査は、同年10月27〜29日にかけてWebアンケートで実施したもので、全国の20〜59歳の有職者400人(男女均等)から回答を得た。
全体では、生成AIを「仕事または日常のいずれかで使っている」が46%、「ほとんど使っていない」が54%となった。生成AIの必要性についても「なくてはならない」「あった方が助かる」の合計が45%、「なくても困らない」「必要性を感じない」の合計が55%となっており、利用と必要性の両面で二極化が見られる。また、世代別では20代を中心に利用が進む一方、50代では利用、必要性ともに低水準となった。
利用しているツールはChatGPTが最多となり(109人)、Gemini(78人)やCopilot(48人)が続いた。仕事での活用内容では資料作成が最も多く(50人)、メール文の原稿作成(49人)、議事録や要約(37人)など、文章生成を中心とした効率化用途が主流だ。加えて、アイデア出し(40人)やデータ整理、分析のサポート(38人)などにも活用が広がっている。
日常生活で最も多かった用途は、相談、助言(49人)となった。キャリアや人間関係、健康など、意思決定の迷いを整理する対話相手として使われている。旅行や飲食店などの調べ物(48人)、推し活や趣味関連(39人)での利用も多く、占いやおまじない(19人)といった感情面に寄り添う使い方も見られた。特に相談用途では、女性の利用が男性の約2倍となり、性別や世代による特徴が顕著に表れている。
職場でのAI利用「ルールなし」が7割超
一方、企業側は対応が遅れている。職場でのAI利用において、「個人のアカウントを使っている」が46%となっており、「会社からアカウントが付与されている」の45%を上回った。
また、AI利用に関して「暗黙の了解で使っている」(34%)、「特に決まりはない」(38%)の合計が72%に達した。「明確なルールがある」は28%にとどまっており、制度が整わないまま現場での利用が進んでいる状況がうかがえる。
業務でAIを使っている人のうち、AIを使っていることを「積極的に伝えている」と回答した人は37%だった。一方、「特に隠してはいないが、自分から話すことは少ない」「周囲にはあまり伝えず、個人的に使っている」「まったく伝えていない」を合計すると63%となった。
AI利用を伝えていない理由としては、「特に理由はないが、話す必要を感じないから」(25人)、「AIを使うことが評価されるか分からないから」(11人)といったものが挙がっている。
AI活用の職場ルール未整備が7割超という状況の中、AIを説明不要のツールとして個人の判断で活用する「サイレント活用」が広がっている。このことについて同社は、AIが日常的なインフラとして定着した証ではないかと分析している。
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