ニュース
マイクロバブルで微細流路内に数mmの流れを生成、外部ポンプ不要の冷却技術に:組み込み開発ニュース
三菱電機と京都大学は、直径10μmのマイクロバブルを駆動源として微細流路内に数mm規模の流れを生み出す技術を開発した。外部ポンプ不要の冷却技術として、省エネ化への貢献が期待される。
三菱電機は2025年12月4日、京都大学との共同研究により、直径10μmのマイクロバブルを駆動源として微細流路内に数mmの流れを生成する技術を開発したと発表した。
本技術は、直径10μmのバブルを局所加熱で発生させ、その振動と界面温度差によるマランゴニ力(液体界面の物質移動を駆動する流体力)を利用することで、外部ポンプを使わずに流れを生み出せる点が特徴だ。断面100×400μm、一辺3mmの正方形の流路内に、流速100μm/sの流れを生成することに成功し、バブル配置と流路形状の最適化により、流速を440μm/sまで高めた。
外部ポンプの消費電力削減につながり、省エネ性を重視する次世代冷却システムの開発に寄与する。また、電子機器の冷却効率向上を通じて、カーボンニュートラルの実現にも貢献する。
今後は、複数のマイクロバブルを活用して流速を向上させる流体制御技術の開発に加え、従来のマイクロチャネル冷却器に比べて一桁以上高い熱伝達率を達成する伝熱面の開発や、電子機器の排熱を利用してマイクロバブルを生成する技術の開発などを推進していく予定だ。
電子機器の高出力化や生成AI(人工知能)サーバの増加により、発熱対策として水冷方式の重要性が高まっている。特にマイクロチャネル冷却器では、流路幅を100μm以下に微細化する動きが進むが、液体を循環させるには強力な外部ポンプが必要となり、消費電力が課題となっていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
三菱電機の独自フィジカルAI、予防保全で学習データを9割削減し精度を3割向上
三菱電機が新たに開発した「物理モデル組み込みAI」について説明。対象機器の動作や制御に関わる物理モデルの理論式を組み込むことで、予防保全に必要な機器の劣化を推定するAIモデルの開発に必要な学習データの量を約90%削減するとともに、劣化推定の精度を約30%向上できた。
三菱電機が600m先を検知可能な鉄道向け長距離LiDARを開発
三菱電機は、600m先の人や障害物を検知できる鉄道向け長距離LiDARを開発した。同社によれば「業界初」。鉄道の自動運転技術向上や沿線の安全確認作業の効率化に寄与する。
“縦割り組織”にメスを、三菱電機が「インナーソース」活用で開発リードタイム半減へ
三菱電機は「InnerSource Summit 2025」に先立ち、戦略説明会を実施した。デジタル基盤「Serendie」事業の一環としてオープンソースとインナーソース活用を推進し、部門間のサイロ化を解消。2030年までに開発リードタイム半減を目指す。
空中に高輝度映像を表示する新ディスプレイ技術を開発
三菱電機は、高輝度かつ高精細でリアルな映像を空中に表示できる空中ディスプレイ「CielVision」を開発した。装置のスリム化と視認性向上を両立し、多様なXRソリューションの可能性を広げる。
言語の壁をぶっ壊す! 三菱電機が世界初の「しゃべり描き翻訳」を発売へ
三菱電機は生産現場における外国籍従業員との円滑なコミュニケーションを実現するとともに作業品質や安全性の向上などに貢献する「MelBridge(メルブリッジ) しゃべり描き翻訳」を発売すると発表した。
人の集中度合いや眠気をデータ化する分析サービスを三菱電機が商用化
三菱電機は、人の感情やバイタルデータ、環境データを可視化して配信する「エモコ分析サービス」を開始する。人の集中度合いや眠気などのデータを可視化し、労働や教育の環境改善に活用できる。
