自動化機器/ロボットシステムの導入や運用時の注意点〜ロボットSIerをどう選ぶか:中堅中小製造業の自動化 虎の巻(4)(3/3 ページ)
本連載では、自動化に初めて取り組む中堅中小企業の製造現場向けに協働ロボット、外観検査機器、無人搬送機にフォーカスして、自動化を成功させるための導入前(準備)、導入時(立ち上げ)、導入後(運用)におけるポイントを解説する。今回は、自動化機器/ロボットシステムの立ち上げ時やその後の運用の際に注意すべき点などについて記述する。
導入後:自動化機器/ロボットシステムの納期
導入する製品やロボットSIerも決まり、これから自動化機器の運用を始める前に注意すべき点は、機器の納期だ。メーカーに機器の在庫がある場合でも2カ月程度、ない場合は半年ほどかかるときもある。
これは、自動化機器が受注生産である場合が多いためだ。逆に言えば、まだまだたくさんは売れていない商品ということでもある。機器が納品されるまでは、システムの設計や画像の取り込み(外観検査)などが行われる。
なお、自動化機器/ロボットシステムが導入されても、正式運用までには2〜3カ月はかかる。システムでなにか問題が生じた場合には半年かかってしまうこともある。そのため、当初の計画より遅れることのほうが多い。
また、導入後に不具合が発生した場合の保守(メンテナンス)については、事前にユーザーとメーカー(あるいはロボットSIer)との間で確認し、必ず文書を交わしておくこと。
導入後のトラブルの大半は、事前に両社で意識統一していないことから生じている。ユーザーは面倒見の悪いロボットSIerだと思い、ロボットSIerは面倒なことばかりで手離れの悪いユーザーだと思いながら仕事するのは、お互いにとって不幸でしかない。
現場担当者を孤立させない
自動化機器/システムを導入後、全て順調に稼働するということは、まずない。
何かしらの不具合によるトラブルが続いた場合、初めは意気軒高に仕事に取り組んでいた現場責任者もその対応に追われ、ロボットSIerとのやりとりだけで精いっぱいとなることがある。
通常の業務に支障を来すことがしばしばあると、だんだん周りから孤立しがちになる。その場合、経営者をはじめ会社全体からのバックアップ体制があればいいのだが、多くの製造現場ではトラブル対応を現場責任者が一身に背負ってしまう傾向が強い。
前回も触れたようにAI(人工知能)やロボットなどの先端技術のプロダクトは、既存の「装置」のように完成された製品ではない。まだまだ過渡期のものであり、試行錯誤することがどうしても必要なプロダクトである。
現場責任者を孤立させないためにも、新しい機器や技術にチャレンジし続ける「マインド」を会社全体で共有し、企業文化にしていくことが重要だ。
現場で日々「チャレンジング・マインド」を体験することは、高い費用をかけて従業員を「リスキリング」するよりもずっと人材育成ができ、従業員の仕事に対するモチベーションアップにつながると思う。
まとめ
- 自動化機器はメーカーや機能の他、自社の現場に適しているかなど総合的に判断する。将来の展開を見据えて選択する必要がある
- どのロボットSIerがユーザーにとって最適かは一概には言えない。スキルだけではなく、ユーザーとの相性も重要である
- 現場担当者を孤立させない。現場で日々「チャレンジング・マインド」を体験することは、従業員の仕事に対するモチベーションアップとなる。新しい機器や技術にチャレンジし続ける「マインド」を会社全体で共有し、企業文化へとつなげていくことが重要だ。
次回(第5回)は、製造現場での要望が多い自動化機器(協働ロボット、外観検査機器、無人搬送機)の中の「協働ロボット」について記述する。
著者紹介
小林賢一
株式会社ロボットメディア 代表取締役
NPO法人ロボティック普及促進センター 理事長
2005年から20年間にわたりインフラ・プラント点検、建築施工、製造工場、介護・高齢者見守り、生活支援などの分野でロボット関連技術の調査、開発支援、実証実験、利活用、セカンドオピニオンに携わり、現在、ロボットビジネスに関するさまざまな相談に応対している。
ロボットビジネスのプレイヤーとして新たな活躍を目指すための講座(日本ロボットビジネス体系講座)や、与えられた「解」ではなく、自ら「解」を導き出し、収益につながるビジネスモデルをコーチングするワークショップ(ロボットビジネス・マインドリセット)を主宰。書籍「ロボットビジネスの全貌シリーズ」の監修、発行も行った。利害関係のない中立で公正な「ロボット・セカンドオピニオンサービス」や、異なる領域・用途にも利用可能な両用技術で既存事業と極限環境双方から収益確保を目指す研究会「ハイブリッドデュアルユース/ダブルインカム」などを実施。
ロボット産業創出推進懇談会 座長(2016〜2021年)
ロボット保険サービス 代表(2012〜2021年)
かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会 事務局長(2011〜2015年)
ロボット実証実験実行委員会 委員長(2011〜2014年)
介護・医療分野ロボット普及推進委員会委員(2010〜2012年)など
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