世界2.4億台のコネクテッドカーを支えるライセンス仲介ビジネスの仕組みとは:コックピット/車載情報機器(2/2 ページ)
Avanci(アバンシ)は、世界2億4000万台以上のコネクテッドカー向けに展開している先端通信技術のライセンスプログラムの仕組みや導入実績などについてに説明した。
4Gや5Gなどさまざまな移動体通信技術のライセンスプログラムを提供
アバンシは自動車分野向けに、さまざまなプログラムを展開している。同社が最初にコネクテッドカー向けとして提供を始めた「Avanci 4G Vehicleプログラム」はここ数年で大きく成長しており、IoT(モノのインターネット)や自動運転などさまざまな技術に対応する。フィッツジェラルド氏は「ライセンシーはこのプログラムに参加することでコネクテッドカーに関するさまざまなテクノロジーのライセンスを受けることができる」と語る。
最新のコネクテッドカー向けには2023年8月から「Avanci 5G Vehicleプログラム」を展開。4Gのプログラムに関わっていた20社以上のライセンサーが5Gプログラムに参加している。他にも、自動車の販売後などで使用するアフターマーケット向けのプログラム「Avanci Aftermarket」やスマートメータープログラム「Avanci Smart Meter」、EV(電気自動車)用充電器のプログラム「Avanci EV Charger」といった移動体通信プログラムも提供している。
また、アバンシは自動車関連以外にもIP(インターネットプロトコル)をベースにした次世代のテレビ放送規格ATSC3.0に対応し、市場の9割をカバーする放送プログラム「Avanci Broadcast」や動画のストリーミング使用するコーデック技術に関するビデオプログラム「Avanci Video」など多様なプログラムを展開している。加えて、特定の技術に対してライセンスを付与するカスタムメイドのプログラム「Avanci Solutions」も提供し、さまざまなニーズに対応している。
日本市場開拓時の苦労話
アバンシのプラットフォームを日本市場に導入する初期段階では、特許活用の文化の違いから理解を得るのに時間がかかったという。アバンシ 東京オフィス 代表の山本一成氏は「日本の社会では積極的にライセンスを活用して金銭を得るという文化があまり無かった。ましてや、通信業界が自動車業界に特許ライセンスを供与することは非常に珍しいケースであった」と述べる。
日本でアバンシのモデルを普及させるために、ライセンスの価格がしっかりとしたロジックに基づいて設定しているものだと説明を続けることで、理解を得る機会が増えていったという。「結果的に、日本でも多くの企業がわれわれが提供するプログラムに参加しており、日本がキーマーケットになるまで成長した。グローバルな形のプラットフォームを構築できることを特許庁や内閣といったさまざまな官公庁の方々に理解していただいたと思っている。一つ一つの積み重ねがあり、やっと実現した」(山本氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
自動車向け5Gライセンスプログラムを提供、58社の特許をカバー
アバンシは5Gコネクテッドカー向けライセンスプログラムの提供を開始する。
住友ゴム工業が車載ソフトウェア開発の国際基準でプロセス能力レベル3の認定取得
住友ゴム工業は、車載ソフトウェア開発の国際基準「Automotive SPICE」において、第三者認証機関であるSGSジャパンによってプロセス能力レベル3を認定された。
モビリティDX戦略がアップデートした理由、SDV開発競争激化と米国規制対応に照準
100年に一度の変革期にさらされている日本の自動車業界が厳しい競争を勝ち抜くための原動力になると見られているのがSDVだ。本連載では、自動車産業においてSDVを推進するキーパーソンのインタビューを掲載していく。第4回は、アップデートを果たした「モビリティDX戦略」の狙いについて経済産業省の斎藤翔太氏に聞いた。
「オールイーサネット」の車載ネットワークの実現へ、CANは使わず
現在の車載ネットワークのアーキテクチャは拡張性が不足し、持続可能ではなくなる。オンセミは、こうした状況において集中型で一元的な通信ネットワークが不可欠だと訴える。
コネクテッドカーの規制対応やセキュリティに欠かせない「SBOM」
VicOneは「コネクテッドカー規制とSBOM」をテーマにオンラインでセミナーを開いた。Astemo、ティアフォー、VicOneから出席した立場の異なる3人の登壇者が、コネクテッドカーに求められるセキュリティとソフトウェア部品表(SBOM)について語った。
AWSはなぜ自動車業界で採用されるのか、強みは「イノベーション文化」にあり
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)はオンラインで会見を開き、自動車業界における同社の取り組みについて説明した。



