54兆円規模の宇宙市場に参入へ 古河電工と東大が実証衛星「ふなで」を打ち上げ:宇宙開発(2/2 ページ)
古河電気工業と東京大学大学院工学系研究科は、実証実験衛星「ふなで」を2026年10月に打ち上げると発表した。この打ち上げを通じて、古河電工製人工衛星用コンポーネントの軌道実証と、東京大学が研究しているフォーメーションフライトの基礎運用実証を進める。
古河電工はコンポーネントだけでなく衛星本体の量産/供給も視野
近年、世界の宇宙産業市場が大きくなっており、その規模は約54兆円に達する。中でも人工衛星については、大型衛星よりも低コストかつ短期間で開発が可能な小型/超小型衛星の利用拡大が期待されている。特に地球観測や通信インフラの構築などのミッションで多数の小型/超小型衛星を利用する「小型衛星コンステーション」により、衛星開発数が爆発的に増加する可能性が高くなっており、迅速な設計対応や安定的な製造技術が、今後の宇宙産業の重要な競争力になるとみられている。
中須賀氏は近年の宇宙産業について「最近は民間企業が元気である。これまでの大きな衛星だけでなく、小さな衛星をたくさん打ち上げることによる小型衛星コンステーションが社会の大きなビジネスになりつつある。民間企業が自分たちの力で成長することによって宇宙関連で完成させた製品やサービスを、政府が購入するという流れに変わってきている」と分析する。
これらの背景から古河電工と東京大学は、2023年4月に同大学内に社会連携講座を開設し、今後の大量生産が求められる小型/超小型衛星および搭載する各種コンポーネントの設計/開発を中心とする技術習得と、より効率的で付加価値の高い人工衛星製造/供給体制の構築に向けた諸課題の解決に取り組んできた。ふなでも社会連携講座を通じて設計/開発された実証衛星である。
「2023年から東京大学の指導の下、社会連携講座第1期として活動し、そこから数多くのことを学んでヒントを得た。宇宙を身近なインフラにするためには、国産小型/超小型衛星の供給力強化と利用機会の促進が重要になる」(枡谷氏)
古河電工は2026年から社会連携講座第2期として、製造業のコア技術を生かした実証コンポーネントの拡販と他の種類のコンポーネント開発/展開を進めていく。そして、小型衛星/超小型衛星の量産/供給といった衛星製造体制を整える方針である。また、同社が展開する地上サービスや要素技術を衛星技術と組み合わせた、社会インフラ維持管理サービスの展開も検討している。
東京大学は古河電工に対して、衛星開発手法やプロジェクト進行の最適化支援を進めていき、安くて信頼性が高い衛星製作の検証に取り組んでいく。「古河電工には衛星作りをとにかく勉強してもらいたいと思っている。開発から運用まで一貫したコスト感やさまざまな箇所で求められる判断力を身につけていただき、これを支援していく」(中須賀氏)。
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