1GHz動作のMRAM搭載Armマイコンのラインアップを拡充:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスは、1GHz動作のArm Cortex-M85コアを採用した32ビットマイコン「RA8M2」「RA8D2」を発売し、量産を開始した。MRAM搭載により高耐久、高速書き込みを可能にし、産業機器やHMI用途に対応する。
ルネサス エレクトロニクスは2025年10月22日、32ビットマイコン「RA」ファミリーの新製品として「RA8M2」および「RA8D2」を発売し、量産を開始したと発表した。RA8M2は汎用機器向け高性能CPUモデル、RA8D2はグラフィックスおよびHMI(ヒューマンマシンインタフェース)向けに最適化されたモデルで、AI(人工知能)対応の「RA8P1」、モーター制御向け「RA8T2」と合わせて新世代「RA8」シリーズを構成する。
両製品はArm Cortex-M85(1GHz)とCortex-M33(250MHz)のデュアルコア構成で、CoreMark値は合計7300を達成した。22nmプロセスを採用し、メモリには高速書き込みと高耐久性を備えるMRAMを採用。HeliumテクノロジーによるDSP(デジタルシグナルプロセッサ)やML(機械学習)処理の高速化にも対応する。
さらにデュアルコア構成のため、サブコアのCortex-M33によりシステムの機能分割やタスク分散処理を効率的に行える。これにより、メインコアのCortex-M85を必要時のみ起動させることで、システム全体の消費電力を抑制する。また、ギガビットイーサネットやTSNスイッチを標準搭載し、産業ネットワーク接続も可能だ。
HMI向けのRA8D2は、LCDコントローラーや2Dグラフィックスエンジン、カメラインタフェース(CEU、MIPI CSI-2)を搭載し、画像取得から処理、描画までを高速化した。デジタルマイク入力にも対応し、音声認識やボイスAIアプリケーションをサポートする。
GUI開発環境としてSEGGER「emWin」やMicrosoft「GUIX」などをFSP(Flexible Software Package)に統合。Heliumアクセラレーションにより最大27fpsのJPEG描画を可能にした。
両製品は、産業機器、セキュリティ、医療モニター、家電など幅広い応用を想定。FSPによりRTOSやAI、クラウド連携の実装も容易だ。
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