粘土状で熱伝導! 接着剤不要で高効率に放熱するTIM材:Japan Mobility Show 2025
TPRは、「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー) 2025」で、バインダーとしての機能に優れるカーボンナノチューブ(CNT)と高い熱伝導性を有すサーマルインタフェースマテリアル(TIM)材「熱伝導クレイ」を紹介した。
TPRは、「Japan Mobility Show 2025」(プレスデー:2025年10月29〜30日、一般公開日:同年10月31日〜11月9日、東京ビッグサイト)に出展し、開発が完了したカーボンナノチューブ(CNT)と量産技術の開発を進めるサーマルインタフェースマテリアル(TIM)材「熱伝導クレイ」を披露した。
さまざまな形状への加工に対応
同社のCNTは、最大2mmの長さに対応する他、3〜7層までのマルチウォール(多層)化が可能で高強度を実現する。TPRの説明員は「当社のCNTは2mmと長くできるため、バインダーとしての機能に優れる。リチウムイオン電池の電極などのバインダーとして使用すると、凹凸のある部分で導電ネットワーク(電気の通り道)が途切れないため、性能の向上に貢献する」と話す。
同材料はアスペクト比が高いため、少ない添加量で高い電気伝導性や強度を付与できる。さらに、バインダーとして使用した場合に性能低下の要因となる金属不純物が250ppm以下と少ない。同材料の直径は5〜12nmで、比表面積は225〜390m2/g、G/D比は0.8以上となる。「当社では顧客の要望に応じて、分散液、ヤーン(紡績可能な糸状)、粉体、複合ゴム、不織布、フィルムなど、さまざまな形状に加工して、CNTを提供できる」(TPRの説明員)。用途としては、電気自動車(EV)に搭載するバッテリー向けのバインダーやヒートシート、電磁波ノイズ抑制シートなどを想定している。
柔軟で凹凸への追従性に優れる
熱伝導クレイは同社のCNTをフィラーに使用した粘土状のTIM材で、高い熱伝導を実現している。熱伝導率は3W/m・Kで、体積抵抗は2×1013Ω・cm、硬度(デュロメータ)は30Shore OOとなる。
加えて、柔軟で凹凸への追従性に優れるため、発熱体に密着し効率的に放熱できる。追従性を確認するため、同社では、標準粗さ片(Rz50)に熱伝導クレイを押し付けた後、剥離して接触面を観察した。その結果、細かな空隙が埋まり効率的に放熱されることが分かった。
TPRの説明員は「例えば、発熱体であるICチップとヒートシンクなどの間に熱伝導クレイを取り付けることで、ICチップを隙間なく密着させ、効率的にヒートシートへ放熱できる。熱伝導クレイは接着性に優れるため装着に当たり接着剤は不要だ。リワーク性も高く、再度搭載しやすい」と述べた。
会場では、厚さ1mmの熱伝導クレイと他社の熱伝導シートの性能を比較するデモンストレーションが行われた。デモンストレーションでは、温度計を取り付けた発熱体とヒートシンクの間に熱伝導クレイあるいは熱伝導率8.2W/m・Kの熱伝導シートを設置し、性能を比べた。その結果、熱伝導クレイは発熱体に密着し効率的にヒートシンクに放熱した。熱伝導シートは密着せず熱が円滑にヒートシンクに逃げなかった。「最大で3℃の温度差があった」(TPRの説明員)。
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