「DX(デジタルトランスフォーメーション)で思ったほどの成果が出ない」という声がいまだに強く聞こえてきます。例えば、MONOist主催イベントの来場者アンケートで見ても、工場のDXの進捗について成果が出ている」とした回答が23.4%だったのに対し、「期待ほどの成果は出ていない」とした回答は36.2%となり、期待通りではないとする回答者の方が多くの比率を占めていました。
DXはデジタルによるビジネス変革だとされていますが、基本的に現在の業務で見えている範囲でデジタル技術やデータの活用を進めようとしても、現状の効率化が進むだけで、大きな成果を生み出すことはできません。従来データ化ができていなかった領域をデータを活用して業務の在り方を変えてみたり、他部門とデータ連携をすることで業務間で生まれていた無駄なプロセスを削減したりすることで初めて、大きな成果を生み出すことができます。しかし、部門間での連携などが必要になるため、複数組織が協力して取り組む必要があり、組織としての手法を変える「ビジネスプロセス変革」が重要になります。
ただ、現在の「DX」では「D(デジタル、データ)」に引っ張られ過ぎて、「X(ビジネスプロセス変革)」が考えられていなかったり、うまく取り組まれていなかったりするケースがよく見られています。最近ではセミナーでも「AIを使った変革を考えろと言われてきました」などという人もよく見掛けますが、これらも「D」側から入って「X」側が後回しになっている例といえるでしょう。
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