Euro7対策に光明、ブレーキダスト24%減のバインダー樹脂を開発:材料技術
2028年適用予定の欧州の排ガス規制「Euro7」では、ブレーキダスト(摩耗粉)も規制対象となる。この厳しい環境規制をクリアするための切り札として、住友ベークライトが自動車用ブレーキパッド用の新たなバインダー樹脂を開発した。
住友ベークライトは2025年10月23日、自動車用ブレーキパッド用バインダー樹脂として、耐摩耗性に優れたアミド変性フェノール樹脂「スミライトレジン PR-56531(以下、PR-56531)」を開発したと発表した。同製品の使用により、欧州の排ガス規制「Euro7」で規制されるブレーキダストの発生量低減が期待できる。
2027年に量産および販売開始
近年、深刻化する大気汚染の改善に向け、自動車から排出される有害物質への規制が強化されている。特に2028年から適用開始予定のEuro7では、ブレーキの摩擦によって放出される粒子(ブレーキダスト)の量も規制されることとなり、今後もさらなる規制強化が予想される。そのため、欧州市場向け自動車をはじめ、摩耗粉量を低減したブレーキシステムの開発が急務となっている。
そこで同社は、自動車ブレーキパッド用の新たな耐摩耗バインダー樹脂として、PR-56531を開発した。
PR-56531は、ブレーキパッドの耐摩耗特性の向上に役立つ。同社内で実施したブレーキパッドモデル配合成形体のダイナモ試験において、未変性フェノール樹脂(ストレート樹脂)に比べて摩耗量が24%低減することを確認した。
同製品は、従来の摩擦材製法に適用することも可能であり、摩擦性能を維持しながら耐摩耗性を高められる。また、同社の海外拠点でも生産可能なため、中国や東南アジア、欧米など各エリアからの現地供給が可能だ。
今後は、同製品の環境負荷低減の特性を生かし、欧州市場を中心に高機能摩擦材用バインダー樹脂としてのシェア拡大を目指す。現在、Euro7対応のブレーキ摩擦材市場参入を目指し、国内外の摩擦材メーカーで性能評価を実施している。2027年に量産および販売開始を目標に、国内外での年間売上高10億円に向けて取り組んでいる。
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