自社オリジナル製品のシーズ探しから量産するまでのステップ【後編】:ODMを活用した製品化で失敗しないためには(16)(1/3 ページ)
社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第16回は、前回に引き続き、スタートアップが自社オリジナル製品を作ると決めてから量産を開始するまでの流れを紹介する。
スタートアップが自社オリジナル製品を作ると決めてから量産を開始するまでのプロセスを、時系列で解説する。
【前編】では、「1.シーズ探し」から「6.製品仕様書の作成」までを取り上げた。今回の【後編】では、「7.ODMメーカーを探す」から「12.量産開始」までを説明する。
ステップ7 〜ODMメーカーを探す〜
基本は、ネット検索で探すことになる。しかし、ODMメーカーの選定はとても難しい。選定で失敗してしまう例で多いのは、次の2つのケースだ。
- 設計費用が当初の見積もりから増加し、追加請求された
- 市場で販売できるレベルの製品の設計ができなかった
1.と2.はいずれも、市場で販売される製品の設計経験が浅いことに起因する失敗例であり、連携型ODMメーカーに委託した際に発生しやすい。
1.は相見積もりや契約によって防ぐことが可能だ。2.はこれまでの設計実績を事前に確認することで回避できる。
詳しくは、連載第3回「ODMメーカーの種類と特徴、そして選び方のポイント【前編】」、第4回「同【中編】」、第5回「同【後編】」を参照し、専門家と相談して念入りにODMメーカーを選定してほしい。
なお、いずれの失敗例も、ある程度設計が進んでから分かってくるため、スタートアップ側の損失は小さくない。過去には、500万〜1000万円規模の損失を出したケースも見られた。
ステップ8 〜委託する内容を明確にする〜
ODMとは、設計製造委託である。すなわち、CAD設計⇒試作⇒検証⇒量産部品(金型)作製⇒量産までを委託するものであり、このうち量産部品作製までが「設計」、最後の量産が「製造」に当たる。
ただし、製品を作って販売するには、次の4つの要素も必要となる。
- 企画書の作成
- 意匠デザイン
- 修理/サービス(問い合わせなど)
- 設計変更
1.企画書の作成と2.意匠デザインについては、ODMメーカーが併せて受託してくれる場合もある。しかし、スタートアップとしては1.企画書の作成はぜひ自社で行ってほしい。何のために起業したのかが分からなくなってしまうからだ。
2.意匠デザインの委託先を自社で探す場合は、基本的にネット検索で見つけることになる。スタートアップの製品イメージに通じるデザインを担当した経験がありそうなプロダクトデザイナーがいれば、コンタクトを取ってみるとよい。「グッドデザイン賞」などを検索キーワードに加えて探す方法も有効だ。
量産後には必ず、3.修理/サービスと4.設計変更がある(参考:連載第13回「続・量産開始後も続くODMメーカーとの関係」)。ここでいうサービスとは、製品の使い方や修理といった問い合わせに対応する業務を指す。
3.修理/サービスのうち修理については、別途ODMメーカーに委託する。量産が開始された後に、修理の依頼方法や見積もりの算出方法などをあらかじめ決めておく必要がある。一方で、サービスはスタートアップ自身が担当しなければならない。
4.設計変更とは、量産後に設計上の欠陥が見つかった際に、その修正を目的として設計を変更することだ。コストダウンやちょっとした機能アップを目的として行われる場合もある。製品を市場に投入した後には避けられない工程であり、この対応もODMメーカーへ別途委託することになる。
ステップ9 〜委託条件を明確にする〜
委託条件は、主に次の3つである。
- 製品仕様
- コスト
- 日程
1.製品仕様については、前回の「ステップ6.製品仕様書の作成」で説明した。委託後にこの内容が変更されると、2.コストおよび3.日程にも影響が生じる可能性がある。
2.コストに関しては、連載第11回「しっかりと把握しておきたいODMに必要な費用」を参照してほしい。3.日程は、ODMメーカーが委託された製品にかけられる工数によって決まるため、ODMメーカーとの協議が必要となる。
基本的には、2.コストと3.日程は、最初の約束(契約書に明記してもよい)から増えてはならない。しかし現実には、当初の見積もり内に収まらず、設計費や金型費の追加請求、製品コストの上昇、日程遅れといった事態がしばしば発生している。原因としては、ODMメーカーの社内事情、見積もり能力、設計力、マネジメント力などが挙げられる。
契約書に賠償責任条項を記載してもよいが、そもそもスタートアップがODMメーカーに委託する製品は、多くの場合、まだ市場に存在しない新規技術を用いた難易度の高い設計である。そのため、まずは話し合いによる解決を基本としたい。
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