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シリコン量子コンピュータの大規模化と高信頼化を両立する新制御技術を開発:量子コンピュータ
日立製作所は、シリコン量子コンピュータの大規模化と計算の信頼性向上を可能にする2つのスピン量子ビット制御技術を開発したと発表した。
日立製作所は2025年10月8日、シリコン量子コンピュータの大規模化と計算の信頼性向上を可能にする2つのスピン量子ビット制御技術を開発したと発表した。創薬や材料開発、金融分野など、量子コンピュータが活用される分野において、社会課題の解決や新たな産業の創出に貢献する。
新技術の1つは、制御装置から少数の信号線で制御信号を送り、量子チップ近傍に高精度な制御信号を生成する「デジタル制御コンベアベルトシャトリング方式」だ。複雑な配線を不要とし、伝送ひずみも抑制され、拡張性と運用性を高める構造を可能にした。
もう1つは、ノイズや外乱の影響を抑え、量子ビットの状態を長時間安定させる制御技術だ。マイクロ波の連続照射と位相制御を組み合わせることで、従来95%だった量子ビットの忠実度を99%以上へと向上させた。これにより、高い計算精度と信頼性を維持しつつ、誤り訂正を前提とした量子計算に対応できる。
デジタル制御方式では、シミュレーション上で99.9%の高忠実度を確認した。シンプルな構造で配線ボトルネックを解消し、大規模量子チップの設計を容易にする。
今後は理化学研究所などとの共同研究を通じて、実チップでの低温実証や、誤り訂正を見据えた多様な制御パターン開発を進める。また、クラウド公開に向けた実証を進め、シリコン量子コンピュータによる誤り耐性量子計算の社会実装を加速するとしている。
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