ソルダーレジストインキの原料管理はバーコード、自動化も進む太陽インキ製造の工場:メイドインジャパンの現場力(3/3 ページ)
主力生産品として液状のソルダーレジストインキを扱っている太陽インキ製造の埼玉工場。同工場の取材レポートを通して、液状ソルダーレジストインキの生産手順や原料管理手法、自動化している工程などを紹介する。
秤量工程でも識別用のバーコードを活用
練肉では混ぜ合わせた原料を滑らかで均一な状態にする。主に混練機「3本ロールミル」を使用して撹拌したソルダーレジストインキの粉の固まりを小さく均等に分散させることで、全体において成分が均一な状態にする。使用する3本ロールミルは、3本のロールが搭載されており、回転速度が異なるロールの隙間にソルダーレジストインキを通して、分散し全体を均一にする。
白鞘氏は「撹拌では秤量した複数の原料をざっくり混ぜ、練肉ではより精度高く混合する。練肉を行う練肉室の照明は、ソルダーレジストインキ製品が光で硬化しないように、同製品が反応する光の波長をカットした黄色のランプを採用している。同製品の仕様によっては、3本ロールミルで複数回の練肉を行うケースもある」と話す。
加えて、練肉室には混練機「ビーズミル」も用意している。白鞘氏は「ビーズミルは、粘度が低いソルダーレジストインキ製品に使える混錬機だ。この装置は、ビーズを当てた衝撃を使い、ソルダーレジストインキを混錬する。3本ロールミルよりも粒子を細かくできる。液状で出荷するソルダーレジストインキに3本ロールミルを、粒子の細かさが求められるドライフィルムに加工するソルダーレジストインキにビーズミルを利用するケースが多い」と述べた。
粘度調整では、専用の装置を用いて指定の粘度になるまで溶剤を追加してソルダーレジストインキ製品を調整する。専用の装置では指定の量で溶剤が投入される。それを撹拌することによって、指定の粘度まで下げていく。「粘度調整で利用された溶剤は、レジストの乾燥工程で揮発するため、最終製品には残らない」(白鞘氏)。
充填では、粘度調整が完了したソルダーレジストインキが入った桶は、作業員により充填室に運ばれ、専用ラインにセットされる。その後、専用ラインでそのソルダーレジストインキがポンプを介して容器に自動で充填され、製品の名前や注意事項が表示されたラベルを貼り付けられ製品が完成する。完成したソルダーレジストインキ製品は製品倉庫棟に自動搬送され出荷を待つ。
「粘度調整と充填を行う部屋の照明でもソルダーレジストインキ製品が光で硬化しないように光の波長を調整した黄色のランプを採用している。基本的に自動で充填作業が行われるが、桶の底のソルダーレジストインキをかき出すなど、作業員が補助を行う場合もある」(白鞘氏)
なお、埼玉工場で生産されたドライフィルム用ソルダーレジストインキは、外部の企業により塗工やスリット(裁断)の作業が行われ、フィルム製品が仕上げられている。同社の北九州事業所(福岡県北九州市)では、ドライフィルム加工の内製生産も実施している。
また、埼玉工場の敷地に隣接する嵐山大沼には、太陽ホールディングスの子会社である太陽グリーンエナジーが設置した水上太陽光発電所がある。同発電所と、太陽グリーンエナジーが持つ全国18基の水上太陽光発電所で発電した電力を活用することで、太陽インキ製造埼玉工場を含む、グループの国内エレクトロニクス事業や医療/医薬品事業における外部購入電力消費量相当を賄っている。さらに、Apple向けソルダーレジストインキ製品を2018年から100%再生可能エネルギーで生産することを約束している。
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