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約400種類の嗅覚受容体を網羅解析する技術を確立医療技術ニュース

花王は、ヒトが持つ約400種類の嗅覚受容体を、培養細胞の表面に安定して発現させることに成功した。これにより、匂い物質に対する受容体の反応を網羅的に解析できる技術「ScentVista 400」を確立した。

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 花王は2025年9月24日、ヒトが持つ約400種類の嗅覚受容体を、培養細胞の表面に安定して発現させることに成功したと発表した。これにより、匂い物質に対する受容体の反応を網羅的に解析できる技術「ScentVista 400」を確立した。

 鼻の細胞表面に存在する嗅覚受容体は、培養細胞では表面に安定して発現させることが難しい。そのため、匂い物質を認識したときの反応を確認できた嗅覚受容体は、全体の約1割にとどまっていた。

 同社は2023年に、嗅覚受容体を細胞表面に発現させる技術を開発。同技術をこれまで解析ができなかった嗅覚受容体に適用し、培養細胞表面に存在できない原因となるアミノ酸を置き換えることで、ほぼ全ての嗅覚受容体を表面に発現させることに成功した。これを基盤に、マイクロプレート上で一度に反応を解析する方法を構築した。

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アミノ酸の置き換えに伴う嗅覚受容体の培養細胞での存在場所の違い[クリックで拡大] 出所:花王

 解析の結果は、ローズオイルとゼラニウムオイルのように香りが似た物質では、類似した反応パターンを示した。

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異なる香料でも嗅覚受容体の反応パターンが似ている例 出所:花王

 また、インドールのように濃度で香りの印象が変わる物質では、濃度により反応パターンが異なることが確認された。

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同じ匂い物質でも濃度によって嗅覚受容体の反応パターンが異なる例 出所:花王

 これらの結果から、ヒトが感じる匂いは、嗅覚受容体の反応パターンに基づくことが示唆された。

 今回の成果は、香りのデザインや消臭技術に応用可能だ。反応パターンを手掛かりに、心地よい香りを持つ新しい消臭剤の開発や、香料の使用量や種類の削減にもつながると期待される。

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