処方設計から実験までを自動化、ロート製薬とフツパーの研究開発AIエージェント:CEATEC 2025
ロート製薬とフツパーは「CEATEC 2025」において、ヘルスケアおよびバイオ分野における標的探索から処方/実験設定、実験ロボットの制御までを自律型AIエージェントが自動化する「リアラボAI」を公開する。ロート製薬では、医薬品の研究開発期間を1週間から1日に短縮できたという。
ロート製薬とフツパーは、「CEATEC 2025」(2024年10月14〜17日、幕張メッセ)において、両社で共同開発した「リアラボAI」を披露する。リアラボAIは、ヘルスケアおよびバイオ分野における標的探索から処方/実験設定、実験ロボットの制御までを自律型AI(人工知能)エージェントが自動化する技術だ。
同技術は「CEATEC AWARD 2025」においてネクストジェネレーション部門賞を受賞しており、同年10月7日に行われた開催概要説明会で展示を行った。
ロート製薬の医薬品の研究開発現場ではすでに実用性が確認されており、従来1週間かかっていた工程が、1日程度に短縮できるケースもあるという。
リアラボAIでは、論文などの情報収集やデータ解析など「ドライ実験」と、処方/実験手順の生成や実験ロボットの制御などの「ウェット実験」の2段階に分かれており、それぞれ2つのAIエージェントが連携して動作する。
ドライ実験では、研究者が自然言語で目的を入力すると、AIが研究要件を整理し、公開データベースから関連情報を抽出。さらに、バイオインフォマティクス解析(生物のデータをコンピュータや統計学を用いて解析する手法)を自動で行い、仮説の生成までを支援する。
ウェット実験では、処方設計エージェントが成分リストや製造工程を提案し、実験制御エージェントがエーエムアールの自動化ロボット「CHEMSPEED FORMAX」の運転手順や試薬配置を設計する。実験手順が確定すると、シミュレーションを通じて実行結果や動作レポートが画面上に表示される。その後、設定した手順に基づき、実機ロボットが液体の注入や分注などを行う。
現在は共同開発者のロート製薬のみで実運用されているが、2026年前半にはパッケージ版をリリースして外販を始める予定だ。また、今後は処方設計と実験実行エージェントを中心に、化粧品や食品分野での研究開発への展開も視野に入れている。
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