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インタビュー

数カ月が数週間に! テルモが挑んだ「素材開発の“探索”を変えるDX」素材/化学インタビュー(1/2 ページ)

医療機器メーカーのテルモは、スクリーニングステップ「Material Discovery」を構築。これにより、医療機器用新素材のプロトタイプの開発期間を大幅に短縮し、部門間の連携も強化した。いったいどのようにして、この飛躍的な効率化を実現したのか。テルモの挑戦に迫る。

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 医療機器に使われるコーティング素材は、機器の性能や使い勝手にも影響を与えるため重要だ。しかし、対象の医療機器に適したコーティング素材の発見には多くの時間がかかる。

 そこで医療機器メーカーのテルモは、対象の医療機器に適したコーティング素材を短期間で発見できるスクリーニングステップ「Material Discovery(マテリアルディスカバリー)」を構築し、導入した。

 同社 コーポレートR&D コーティングチーム 特任研究員の倉本政則氏に、Material Discoveryの構築/導入の背景、概要と特徴、成果、今後の展開について聞いた。

市場の成長速度に素材開発スピードが追い付けない

MONOist Material Discoveryの構築/導入の背景について教えてください。

テルモ コーポレートR&D コーティングチーム 特任研究員の倉本政則氏
テルモ コーポレートR&D コーティングチーム 特任研究員の倉本政則氏 出所:テルモ

倉本政則氏(以下、倉本氏) 当社のコーティングチームではMaterial Discoveryを導入する以前、数年に1件程度のペースで新たなコーティング素材を開発していた。また、注射器やカテーテルといった製品のニーズが多様化する中で、1つのニーズに対し試行錯誤を繰り返していた。

 医療機器用のコーティング素材に特化した教科書はないので、勘や経験、あるいは文献、競合他社の特許情報を頼りに仮説を立て、新たなコーティング素材の開発を進めなければならなかった。

 しかし、新たなコーティング素材の開発に2〜3年かかることもあり、市場の成長スピードに追い付けず、開発中に対象の医療機器が求める性能や機能が変わってしまうという問題が起こっていた。医療機器は複数の材料(金属や樹脂)で構成されているため、新たなコーティング素材が一部の材料に対応せず、採用できないといった問題も発生し、手探りで開発を行う必要があった。

 コーティング素材の開発スピードが上がらないと、医療機器の開発チームもコーティングチームへの期待を失ってしまう。病院などの臨床現場では、新たな医療機器のスピーディーな製品化が求められており、開発期間の短縮は医療機器メーカーにとって急務となっている。

 こういった状況もあり、当社の製品開発チームでも、社内の既存技術で対応できないかを検討し、難しければコーティング素材メーカーから材料を購入するという選択肢を取ることもあった。つまり、コーティングチームでは社外のメーカーとの競争も激化していた。

 これらの問題を解消するために、Material Discoveryを構築し、導入した。

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