ラボ作業を自動化するモジュール型システム、組み換え自在で研究開発を加速:研究開発の最前線(1/2 ページ)
デンソーウェーブの「COBOTTA LAB Modules」は、卓上サイズの協働ロボット「COBOTTA」と多彩な機能モジュールを組み合わせることで、手作業に頼っていたラボ作業を自在に自動化する。粉体秤量(ひょうりょう)や混合、ろ過など、用途に合わせてシステムを自由に組み替えられるこの新システムは、どのようにして研究者の生産性を飛躍的に向上させるのか。
デンソーウェーブは、「JASIS(Japan Analytical & Scientific Instruments Show)2025」(2025年9月3〜5日、幕張メッセ)に出展し、同月1日にリリースしたモジュール型ラボオートメーションシステム「COBOTTA LAB Modules」を披露した。
スライド移動するCOBOTTAが複数のモジュールを連携制御
COBOTTA LAB Modulesは、卓上サイズの人協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」と標準化されたモジュールを組み合わせたシステムで、スライド移動するCOBOTTAが複数のモジュールを連携制御し、ラボ作業の一部を自動化する。COBOTTAは、人と同じ空間で安全に作業できるロボットで、繊細なハンドリングや自動化の工程を行える。専用開発のマルチハンドを装着することで、複数工程の自動化を実現する。
COBOTTA LAB Modulesの基本セットは、COBOTTA(電動ハンド有、カメラなし)、COBOTTA LAB用標準ハンド、データ管理用ソフトウェア「IoT Data Share/IoT Data View」、ロボットのメンテナンス/操作を支援するソフトウェア「Robot tools(Virtual TP)」、走行軸ベース、COBOTTA LAB用制御BOX、フィールドネットワークインタフェースモジュール、表示ランプ+取付ステーセット、非常停止スイッチ、走行軸用コントローラー、走行軸制御ソフト、モジュール接続ケーブルセットから成る。
IoT Data Share/IoT Data Viewは、作業日時や分注量などの計測データを自動記録し、保存する。QRコードで対象サンプルの情報にアクセスでき、透明性とトレーサビリティーを強化できる。
走行軸ベースはCOBOTTAや各モジュールを安定して設置するもので、COBOTTAのスライド移動も行う。サイズは、モジュール搭載数が4〜6個のSサイズ(W1250×D750mm)、6〜9個のMサイズ(W1650×D750mm)、8〜11個のLサイズ(W2050×D750mm)の3種類となる。
用途に応じて自由に組み合わせられる機能モジュールとして、液体処理用、測定/分析用、撹拌/混合用、ろ過/分離用、容器トレイ、補助/汎用装置をラインアップしている。
液体処理用の機能モジュールは、無線ピペット、有線ピペット、ピレットチップラック、送液ポンプ、定容となる。無線ピペットは、ピレットチップの着脱から試料の吸引/吐出までを自動化し、ばらつきを排除して高い再現性を実現する。ケーブルレス設計でレイアウトの自由度も高い。
有線ピペットは、有線接続による安定した電源と通信で長時間運転に対応し、液面検知により高精度な分注も可能だ。ピレットチップラックは、チップラックを複数保管したい場合に使用するもので、チップ交換をスムーズに行え、作業効率を高められる。送液ポンプは、液体を連続あるいは断続的に送液するもので、定量送液や希釈に適し、流体制御で安定した処理が行える。定容を使用する際に必須の機能モジュールだ。定容は、設定した容積で正確に分注できるもので、手作業のばらつきを排除するため、希釈や標準液の調製に適している。
測定/分析用の機能モジュールは、標準版/高精度版の電子天秤(てんびん)、粉体秤(ひょう)量、粉体ヘッドマガジン、薬さじ交換となる。
標準版の電子天秤は、高精度な質量測定を行える他、その結果をIoT Data Share/IoT Data Viewはと連携して自動記録できる。粉体や液体の定量操作にも対応する。高精度版はより高精度な質量測定に応じる。
標準版の粉体秤量は、薬さじで粉体を定量的にすくい取り秤量する。微量粉体の取り扱いにも対応し、研究開発の自動化と再現性向上に役立つ。高精度版は高精度天秤で微量粉体を精密に秤量する。試薬特性に応じた定量操作が可能だ。両機能モジュールともに、使用に当たっては、標準版あるいは高精度版の電子天秤が必要となる。
高精度版電子天秤で必須の粉体ヘッドマガジンは複数の粉体ヘッドを自動で管理/交換する機能モジュールだ。薬さじ交換は、薬さじを自動で交換できるため、コンタミネーション(意図しない不純物や異物の混入)を防げる。複数試料の連続処理や高い再現性が求められる作業に適している。
撹拌/混合用の機能モジュールは、マグネットスターラー、ボルテックスとなる。マグネットスターラーは、液体を静かに均一に撹拌する。試薬の溶解や混合も安定して行え、回転数や加熱温度の調整も行える。ボルテックスは、チューブやプレートを強力に渦巻き撹拌する。短時間で効率的な混合が可能で、懸濁や反応液の均一化に適している。
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