軸受の技術が揚げ油を救う! NSKが食品油の劣化を防ぐフィルターの量産開発完了:材料技術
ベアリングメーカーのNSKが食用油の寿命を延ばすフィルターを開発。ベアリング開発で培った技術を応用し、揚げ物調理油の寿命を延ばすろ過機向けフィルターの量産開発を完了した。
日本精工(NSK)は2025年9月29日、揚げ物調理などに使われる食用油の寿命を延長し、食品加工メーカー/飲食店などの食用油購入コスト削減に貢献する、ろ過機向け食用油劣化抑制フィルターの量産開発が完了したと発表した。
油交換の回数を3日に1回から4日に1回に
NSKは、2022〜2026年を対象とした中期経営計画で「Bearings & Beyond」を掲げ、新商品/新事業の拡大に取り組んでいる。ろ過機向け食用油劣化抑制フィルターは、NSKが軸受開発で培った潤滑剤の劣化抑制技術を応用し、2015年に開発を開始。2022年には「FOOMA JAPAN 2022」(会期:2022年6月7〜6月10日、会場:東京ビッグサイト)に出展し、市場ニーズ調査を実施。その結果、食用油ろ過機において、油の劣化抑制効果の向上や油交換作業の効率化のニーズが高まっていることが分かった。これらのニーズを踏まえ、社内と顧客での性能評価に基づき改良を重ねた結果、効果検証を終え、量産開発の完了に至った。
ろ過機向け食用油劣化抑制フィルターは、フィルター内部の繊維表面に、添加剤を付着(担持)させた仕様だ。これにより、食用油をろ過することで、繊維表層で揚げかすなどの異物を除去すると同時に、添加剤で酸化劣化物も除去する。
同製品を用いて、食用油をろ過することで、既存の市販フィルター使用時に比べて食用油の寿命を最大3割延長可能だとしている。例えば、これまで3日に1回油を交換していたところを、4日に1回の回数に減らせる可能性がある。その結果、食品加工メーカー/飲食店などの食用油購入量およびその購入費用削減に貢献する。使用済み食用油廃棄量の削減を通じて環境保全にも役立つ。
食用油の劣化物を除去する従来手法の一例を挙げると、ろ過助剤と呼ばれる粉体を使用する方法があるが、油を吸って重量が増した粉体の回収に伴う作業負担や飛散した粉体の吸引といった健康リスクがある。一方、今回の製品は、油劣化抑制機能を持つ添加剤をフィルター内部に担持させた構造の実現により、従来の粉体を使用した際の健康リスクを軽減する。
添加剤には食品添加物を使用。フィルターは、厚生労働省が定める食品/添加物などの規格基準である材質/溶出試験を参考とした自主基準をクリアしており、食品安全面にも配慮されている。
今後、同社は新製品の性能向上に取り組みつつ、ろ過機を持たないコンビニエンスストアやスーパーマーケット、弁当/総菜店を含めた小売業などの顧客への導入検討など、ビジネスの拡大を目指す。
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