三井物産とマイクロ波化学が挑む「低炭素リチウム製錬」技術、パイロット機完成:材料技術
リチウム鉱石の製錬は化石燃料に依存し、多量のCO2を排出してしまうのが現状だ。この難題を解決すべく、三井物産とマイクロ波化学が「低炭素リチウム製錬」技術の確立に挑んでいる。
三井物産とマイクロ波化学は2025年9月29日、マイクロ波を用いた低炭素リチウム鉱石製錬技術の共同開発に向けたパイロット機を完成し、実証試験を開始すると発表した。
2030年頃の商業化を目指す
電気自動車(EV)の電池に使われるリチウムは、世界各国で重要鉱物として指定されるなど、経済安全保障の観点からも安定した供給網の確立が求められている。一方、リチウム鉱石の処理は化石燃料の燃焼熱を用いるため、製錬工程から排出される多量のCO2を削減することが課題となっている。この課題を解消した、低環境負荷で製造される低炭素リチウムのニーズが今後は高まる見通しだ。
そこで三井物産とマイクロ波化学は、鉱石を高温で加熱して化学組成や結晶構造を変化させる熱処理プロセス「V焼(かしょう)」を電化したリチウム製錬技術の確立に取り組んでいる。V焼はリチウム製錬におけるCO2排出の主要因だ。同社はマイクロ波を利用したリチウム製錬技術の確立に取り組み、新規リチウム鉱山や製錬工場への適用を検討している。
今回、マイクロ波を利用したリチウム製錬技術をスケールアップするに当たり、マイクロ波化学の大阪事業所(大阪市住之江区)で実証試験を行うパイロット機を完成させた。
同パイロット機は、リチウム鉱石を連続でV焼処理するマイクロ波昇温装置で、CO2排出量の削減や熱効率改善による省エネルギー化を実現する。今後、同パイロット機を用いて年間約700t規模の試験を実施し、2030年頃の商業化を目指す。
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