東レらが国内「舶用アンモニア燃料供給拠点」整備に向け共同開発:製造マネジメントニュース
国際海事機関(IMO)の規制強化により、海運業界は今、ゼロエミッション燃料への転換を急いでいる。中でも温室効果ガスを排出しないアンモニア燃料は、その有力な切り札だ。そこで、東レらは舶用アンモニア燃料供給拠点の整備に向け共同開発をスタートした。
東レは2025年9月25日、伊藤忠商事、上野トランステックを含む関係会社と舶用アンモニア燃料利用の社会実装を目指し、日本国内における舶用アンモニア燃料供給拠点の整備に向け、安全性の検証に加え、具体化に向けた必要設備や許認可関係、舶用アンモニア燃料の取引条件などの検討を目的とした共同開発に関する覚書を締結したと発表した。
深冷アンモニアタンクの機能を安定供給拠点へと拡張
国際海事機関(IMO)は、「2050年ごろまでに国際海運からの温室効果ガス(GHG)の排出ゼロ」という国際目標の実現に向けた中期施策として、舶用燃料を段階的にGHG排出量が少ない代替燃料に転換する制度や、ゼロエミッション燃料船導入に経済的インセンティブを与える制度を含む条約改正案が国際間で承認された。この枠組みが発効されれば、GHG排出量が少ない代替燃料の供給に向けた取り組みや、ゼロエミッション燃料船の導入が加速する。
代替燃料の中でも、アンモニアはゼロエミッション燃料として期待されており、アンモニア燃料船は、海事関係者にとどまらず荷主や燃料生産者など、多くの関係者が検討、開発を進めている。その中で舶用アンモニア燃料の供給拠点整備は海事産業と燃料産業の接点であり、日本国内においても安定的な燃料供給の体制構築を目指し、関係各社が協議を進めている。
東レは、中京地域において半世紀以上にわたり培ってきたアンモニアの取り扱いに関する知見と人材を生かし、国内最大級の深冷アンモニアタンクの機能を、自社原料用輸入拠点から地域への安定供給拠点へと拡張することで、アンモニア燃料の供給拠点整備に貢献する。
加えて、名古屋港(名古屋市港区)地域で、エネルギー転換を支える基盤づくりを通じて、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」で掲げる、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界(GHG排出実質ゼロの世界)」の実現を目指す。
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