オリンパス新CTOが技術戦略を説明、重点3領域の新製品を3〜5年で市場投入へ:医療機器ニュース(2/2 ページ)
オリンパスの新CTOであるサヤード・ナヴィード氏が「OLYSENSE」「エンドルミナルロボティクス」「シングルユース内視鏡(SUE)」の3領域を重点プロジェクトとする中長期の技術戦略について説明。今後3〜5年で、これら3領域の新製品を市場投入していく方針である。
「OLYSENSE」の後に「エンドルミナルロボティクス」の導入が始まる
このCTOビジョンの下で研究開発を進める重点プロジェクトが、OLYSENSE、エンドルミナルロボティクス、シングルユース内視鏡の3領域である。
OLYSENSEは、シームレスなインテリジェント内視鏡システムの医療エコシステムを構築するためのフレームワークだ。これまでスタンドアロンのハードウェアとして運用されてきた内視鏡システムをクラウドとつなぐことにより、データとAI(人工知能)を活用して臨床アウトカム(成果)の改善と業務効率の改善を支援するインテリジェント化が可能になる。
OLYSENSEでは、内視鏡システムの本体に「OLYSENSE Hub」をつなぐことでクラウドと接続できるようになる。クラウドと接続によって、オリンパス傘下のOdin Visionが手掛ける「CADDIE」「CADU」「SmartIBD」などの医療AIの利用が可能になる。また、専用アプリである「OLYSENSE Core」をサブスクリプション契約すれば、ワークフロー管理や資産管理、インサイト分析支援などのアプリケーションも利用できる。これらの医療AIやアプリケーションについては、オリンパスグループだけでなくパートナー企業開発のものを用意するなどしてエコシステムを拡充させていく方針である。なお、OLYSENSEの市場投入については「まずは欧州で上市することになるが、早期に日本でも展開していきたい(ナヴィード氏)という。
エンドルミナルロボティクスとは、従来の内視鏡医療において医師が手作業で行ってきた内視鏡スコープの操作や処置具の操作をロボットで機械化する技術のことである。より多くの医療従事者が内視鏡を用いた高度な手技を行えるようになり、患者にとっては安全で回復の早い低侵襲治療の選択肢が広がる可能性がある。
オリンパスは、内視鏡技術におけるイノベーション普及の推移として、まずOLYSENSEによるデータやAIの活用が進んだ後に、エンドルミナルロボティクスの導入が始まると見立てている。その上で、現時点では大腸内視鏡向けでの開発に注力している段階にある。
また、技術開発を加速するため2025年7月に、投資会社であるリバイバル(Revival Healthcare Capital)と共同で、エンドルミナルロボティクスの事業化を目的とする新会社「スワン・エンドサージカル(Swan EndoSurgical)」を設立した。ナヴィード氏は「オリンパスにとってこれまでにない枠組みでの取り組みとなるが、より早期のイノベーション創出に向けてはこれがベストだろう」と述べる。
シングルユース内視鏡は、2030年に向けて大きな市場成長が予測されており、特に泌尿器科や呼吸器科、耳鼻咽喉科などがその成長をけん引すると見られている。リユース型内視鏡が一般的な消化器内視鏡でトップシェアのオリンパスとしても、シングルユース内視鏡で一定のシェアを獲得することで、今後も引き続き内視鏡分野全体でのリーダーシップを維持していきたい考えだ。オリンパスが得意とする消化器分野でもシングルユース内視鏡の導入拡大を目指しており、現在開発中の十二指腸内視鏡を間もなく市場投入する計画である。
ナヴィード氏は「ただし、シングルユース内視鏡はオリンパスの主軸であるリユース型内視鏡の事業を補完する位置付けとなる」と述べている。
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