2025年の国内PE出荷量は横ばいから微増、サステナブルPEの立ち上がりに遅れ:製造マネジメントニュース
国内ポリエチレン(PE)市場は2025年に200万9000t、前年比0.9%増の見込み。2022年から2024年まではマイナス成長が続いていた。サステナブルPE市場は立ち上がりが遅れているが、独自性ある取り組みが生まれている。
矢野経済研究所は2025年8月29日、国内ポリエチレン(PE)市場の調査結果を発表した。2025年の出荷量は200万9000トン(t)で前年比0.9%増になると見込む。2022年から2024年まで続いたマイナス成長は落ち着き、横ばいから微増の出荷量になると想定している。
2024年のPE出荷量は199万1000tで前年比4.2%減だった。樹脂別では高密度ポリエチレン(HDPE)が前年比3.5%減の63万9000t、低密度ポリエチレン(LDPE)が同1.6%減の56万6000t、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)が同4%減の64万1000t、エチレン酢酸ビニール(EVA)が同16.3%減の14万5000tだった。EVAは中国の太陽電池封止材用途で日系EVAメーカーから現地EVAメーカーへの切り替えが進んだことなどから、出荷量の大幅減に陥ったと分析している。
サステナブルPE市場は、足元では極めて規模が小さい。PEの主要用途である食品包装や産業資材では、一部を除いてサステナブル材料の使用割合を定める規制などがなく、立ち上がりが遅れている。一方、欧州ELV規則の施行を見据えたポリプロピレン(PP)分野の動きもあり、リサイクル樹脂のニーズは高まりつつある。
今後は、マテリアルリサイクル(MR)、ケミカルリサイクル(CR)、バイオといった選択肢の中で、各社の得意分野が顕在化していくと予測。MRでは銘柄設計やコンパウンド処方、リサイクル材の改質といった技術力や、高品質なリサイクル材の調達スキーム、有力リサイクル事業者との提携力が競争優位性につながるという。CRやバイオはマスバランス方式によるクレジットの割り当てとなるため品質や価格面での差別化が難しく、ブランド化など、自社の製品を選んでもらう取り組みが重要になると見る。
PEメーカー各社は、サステナブル製品のブランド化に加え、MR-PEの品質保証や改質で差別化を図る動きや、バイオエタノール由来の基礎化学品を製造する技術開発を進めて技術ライセンスするなど、独自性のある取り組みが生まれてきているという。
調査は2025年5〜7月に実施。対象はPEメーカー、方法はオンライン含む面談と文献調査の併用。市場規模は、HDPE、LDPE、L-LDPE、EVAを対象に、輸出分を含んだPEメーカーの出荷量ベースで算出した。PEは軽量で安価、加工が容易な樹脂で、食品包装や各種容器、産業資材などに幅広く使われている。
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