三井化学、出光興産、住友化学が国内PO事業を統合へ、年間80億円以上の合理化:製造マネジメントニュース
三井化学、出光興産、住友化学の3社が、国内のポリオレフィン事業を統合することで基本合意した。縮小する国内需要、供給過多という長年の課題に直面する中、年間80億円以上の合理化を目標に掲げる。
三井化学、出光興産、住友化学は2025年9月10日、三井化学と出光興産の合弁会社であるプライムポリマー(以下、PRM)が行うポリオレフィン(PO)事業と、住友化学の国内のポリプロピレン(PP)事業および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)事業を統合することで基本合意したと発表した。
なお、今回の事業統合は、競争法その他の法令などに基づき必要なクリアランス/許認可などの取得が完了することが前提となる。今後は、正式な最終契約の締結に向け、協議を進めていく考えだ。
3社は以前から、国内におけるPP、ポリエチレン(PE)などのPO事業の競争力強化について連携を模索してきた。
グリーンケミカル事業の実現に向けた取り組みも加速
国内における合成樹脂需要の約5割を占めるPOは、自動車、電子材料、医療機器などの多岐にわたる用途に使用される素材で、国内産業に必要不可欠な製品だ。しかし、1990年代以降、国内POメーカーは統廃合を進めてきたものの、供給過多という課題は依然として解消されていない。人口減少や生活習慣の変化による内需の縮小により、国産POの需要は今後更に減少する見込みだ。
PRMは2005年に三井と出光の合弁会社として設立されて以降、PP、PE(LLDPE、高密度ポリエチレン)を主な製品とし、展開してきた。PRMと住友化学は、それぞれ京葉地域に拠点を持つことに加え、環境負荷低減技術の開発でも、大きなシナジーが期待できる。そのため、住友化学のPPとLLDPEの事業をPRMに統合することは、国内のPO事業強化のみならず輸入品に対する水際競争力につながるという認識を共有している。
今回の事業統合により、3社協力のもと年間80億円以上の合理化を目標として生産体制などを最適化し、競争力を一層強化する。さらに、高機能かつ環境配慮型製品の開発力を高めることで、持続可能なグリーンケミカル事業の実現に向けた取り組みを加速していく。
同事業統合の具体的な手法および条件などについては現時点では未定だが、住友化学がPRMに対して国内のPP事業およびLLDPE事業を譲り渡した上で、PRMの持ち分比率20%に相当する株式を取得する方法を検討している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
住友化学が年産2万トンのLDPE製造設備を2024年度内に停止
住友化学は、千葉工場(千葉県市原市)における低密度ポリエチレン(LDPE)製造設備の一部(年産2万トン)を2024年度内に停止する。韓国で売れているガラス透明ディスプレイと欧州で採用数を伸ばすガラス繊維強化PP
住友化学は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で、「ガラス透明ディスプレイ」やガラス繊維強化ポリプロピレン(PP)の自動車向けグレード「THERMOFIL HP」、ガラス繊維強化リサイクルPP「THERMOFIL CIRCLE」を披露した。成分分析を介して天然素材の売り手と買い手をつなぐプラットフォームをリリース
住友化学は、成分分析を介して天然素材の売り手と買い手をつなぐデジタルプラットフォーム「Biondo(ビオンド)」をリリースした。住友化学がCO2からメタノールを高効率に製造する設備を新設
住友化学は、CO2からメタノールを高効率に製造する技術の実証に向けたパイロット設備を愛媛工場(愛媛県新居浜市)に新設し、運転を開始した。住友化学が愛媛工場でアクリル樹脂をリサイクル、資源循環システムの構築へ
住友化学は、愛媛県新居浜市で保有する愛媛工場にアクリル樹脂のケミカルリサイクル実証設備を新設し、使用済みアクリル樹脂の回収、再資源化、製品での使用を扱う一貫資源循環システムの構築を進めている。