国内初、ごみ焼却施設の排ガスから膜分離でCO2を回収する実証実験:脱炭素
住友化学とJFEエンジニアリングが、独自の膜技術を用いてごみ焼却施設の排ガスからCO2を回収する実証実験を共同で開始する。
住友化学とJFEエンジニアリングは2025年8月19日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託している「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発」において、独自の膜技術を用いたCO2分離回収の実証試験を共同で行うと発表した。
同実証試験は、川崎市環境局が管理/運営するごみ焼却処理施設である川崎市浮島処理センター(神奈川県川崎市)で、2026年3月に開始する。ごみ焼却処理施設の排ガスから膜分離法を用いてCO2を回収する試みは、国内初となる(住友化学調べ)。
OOYOOと共同で開発したCO2分離膜を活用
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、発電設備や産業設備の排ガスからCO2を分離回収する技術の必要性が高まる中、中規模排出源であるごみ焼却処理施設や小規模工場への導入に向けては、設備の小型化/低コスト化という課題がある。
そこで、住友化学は2022年5月にNEDOから受託した今回のプロジェクトで、OOYOO(ウーユー)とともに、分離膜を用いた低圧/低濃度のCO2分離回収の低コスト化技術開発に取り組んできた。
これまでに実機サイズの分離膜エレメントの製造と、複数のエレメントを組み合わせたモジュールの製造に成功した。また、ごみ焼却処理施設の設計、調達、建設、運営で多数の実績を持ち、エネルギープラントや橋梁(きょうりょう)/鋼構造などの社会インフラを幅広く手掛ける総合エンジニアリング会社であるJFEエンジニアリングは、2025年4月に今回のプロジェクトに参画した。
両社で行う実証試験では、住友化学が、OOYOOと共同で開発したCO2分離膜を使用した膜モジュールの組み立て加工や分離プロセスの基礎設計を行い、ごみ燃焼排ガスのような10%以下の低濃度CO2を含有する排ガスから低エネルギーでCO2を分離回収できるシステムを提供する。
JFEエンジニアリングは、CO2分離回収プロセスの詳細設計に加え、CO2分離回収システムを組み込むことが可能なCO2分離回収試験設備の設計、据え付け、運用を行う。
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