JL連合会とヤマト傘下のSSTが提携 共同輸配送で地域間物流ネットワークを強化:物流のスマート化
日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会(JL連合会)とヤマトホールディングス子会社のSustainable Shared Transport(SST)は、共同輸配送に関する連携協定について説明した。
日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会(JL連合会)とヤマトホールディングス子会社のSustainable Shared Transport(SST)は2025年8月7日、東京都内で記者発表を行い、同日締結した共同輸配送に関する連携協定について説明した。同協定の名称は「地域物流事業者の連帯(共同輸配送)により、持続可能な物流ネットワークの構築を推進する連携協定」で、全国各地の物流維持/強化を目的に、地域をつなぐ物流ネットワークの拡充や共同輸配送の社会的な利用促進、物流事業者の事業継続および労働環境の改善を図る狙いがある。
JL連合会は1989年に発足した、全国の中小トラック運送事業者が自ら作り上げた日本全国の物流ネットワーク組織である。荷物のやりとりやトラックの融通配車システム「ローカルネットNEXT」の運営を中心に、組合員各社の輸送効率の向上を図り、CO2排出削減を通じて地域社会への貢献を目的として事業を展開している。現在1600社にも及ぶ中小トラック運送業者が加盟をし、活動範囲は北海道から九州までと全国に分かれて組織運営を行う。
ヤマトホールディングス子会社のSSTは、2024年5月設立の社内スタートアップ企業である。2025年2月から、共同輸配送システムを用いて定時ダイヤで走る幹線トラックを新幹線や飛行機の座席チケットを予約するような感覚で、パレット単位で予約ができ、業種や企業規模を問わずに利用できる「SST便」を提供している。
国内物流業界は、2030年には輸送量に対して必要とされるドライバー数が3割以上不足すると予測されるなど多くの課題が存在する。中でも、配送終了後の帰路にトラックに積載する十分な荷物を確保できず、空車か低積載の状態で走行しなければならないことが常態化していることが、非効率な物流の要因として指摘されている。国内物流を支える中小事業者にも、地方発着路線の減便/廃止や法改正に伴う労働時間規制の影響により、長距離区間の運行が困難になっているという課題がある。今回、JL連合会とSSTが共同輸配送の連携協定を締結したのは、これらの課題を解決するためだ。
今回の連携協定でJL連合会は、地域をつなぐ物流ネットワークを構築するために、同会の組合事業者にSST便への参画を促進する。一方、SSTは、幹線運行/積み替え拠点をJL連合会の組合事業者に提供することで、各事業者の積載率とトラック稼働率を向上させ、日帰り運行の実現を目指す。また、地域を熟知した組合事業者と、ヤマトグループと契約する3500社以上の物流事業者がパートナーシップを結ぶことで、高稼働/高積載の物流ネットワーク構築も可能になる。SST 代表取締役社長の高(正しい漢字ははしご高)野茂幸氏は「多様なパートナーと一緒になって取り組むことで地域をつなぎ、リレーする物流ネットワークを目指す」と述べた。
今回の提携は、中小の物流事業者の事業継続や従業員の労働環境改善にも効果が見込まれる。高野氏は「ドライバーの労働環境をしっかり改善して人が集まる業界にしていかないと、人が足りないという状況が加速していく。それをしっかり食い止めなければならない」と語る。
共同で物流を行うことでトラックの積載率/稼働率が上がり、1日あたりの実働時間も向上するため、結果的に1便あたりの収益が向上する。幹線拠点からの定時運行や中継輸送による宿泊を伴わない日帰り運行も実現でき、従業員の労働環境が改善され、事業継続に貢献する。
高野氏は今後の施策として「これからJL連合会と協議を重ねて、一緒にできる取り組みを次々と見つけて作っていく段階だと考えている。両者が運営するシステムのデータを連携させれば、相乗効果が生まれると容易に想像できる」と抱負を述べた。
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