米菓「ばかうけ」などを製造販売する栗山米菓は2025年7月28日、物流改革の成果を発表した。いわゆる「物流の2024年問題」への対応に2023年11月から取り組み、荷待ち時間の大幅短縮に成功した。栗山米菓の本社がある新潟県内の他の菓子メーカーとも協力し、共同配送モデルの構築も目指す。
2021〜2022年ごろから繁忙期や天候不順時のトラック不足が深刻化するのを栗山米菓でも感じていたという。また、「物流業務の委託先に任せるだけでは済まなくなってきた」(栗山米菓 物流管理部部長の阿部真也氏)。そこで物流の効率化だけでなく現場の負担も軽減するため、2023年11月から複数の施策を段階的に導入した。
まずは、経済産業省/農林水産省/国土交通省が策定した、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」に基づき、「荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール」の達成を目標にした。
積み込みから出発までを1時間に
2時間以内にするという国のルールは、自社での積み込みから出発までの時間と、配送先での荷降ろしから退場までにかかる総作業時間を対象としている。配送先での作業は直接コントロールできない場合もあるため、自社の発送拠点である新潟倉庫での作業時間を1時間以内にすることを目指した。荷待ちや荷役の時間は、これまで3時間程度かかっていた。
具体的には、積み下ろし場所(バース)の予約システム導入による待ち時間削減、パレット化による積載効率向上、賞味期限の「年月」表示によるピッキング作業の軽減、積み込み補助員の配置などを実施した。その結果、新潟倉庫でのトラックの平均滞在時間は1時間に短縮された。今後は、2時間を超えるケースがまだ残っていることへの対応や、継続的な改善に取り組む。
菓子でバラ積みをやめる
出荷を効率化するため、荷物を1つ1つ手作業で積み込むバラ積みから、パレット積みに段階的に切り替えている。菓子はパッケージの体積に対して重量が軽いため、1台のトラックにできるだけ多く積む目的でバラ積みが主流だったが、作業負担が大きい。「バラ積みは『もうできない』と断られるのではないかと感じている。パレット化はメーカーとしてやらなければならないことだ。パレット単位で発注してもらうなどの協力も必要だ」(阿部氏)
ただ、パレット積みの場合は、パレットやトラックの荷台のサイズに最適化されていない商品ではトラックの空きスペースが多くなり積載率が15%ほど低下するのが課題だ。栗山米菓では、商品サイズのガイドラインを策定し、2023年11月から順次、パレット積みに適したサイズへの変更を進めてきた。商品を詰める段ボール箱のサイズから逆算し、生産ラインを見直した。
現在、幹線便におけるパレット化率は60%に到達した。一部の商品は商品サイズをパレットに最適化するために生産ラインや設備の変更が必要なため、現在も対応を続けている。今後はパレット化率を80%まで引き上げる。
パレット化の取り組みは自社パレットでスタートしたが、本社のある新潟まで戻す輸送を考えてレンタルパレットに切り替えている。
栗山米菓を含む新潟県内の菓子メーカー6社で勉強会を実施する中で、同業他社でパレット単位での共同配送に取り組むことも話題に上っているという。1社ではトラックを満載にするのが難しくなっているためだ。パレット単位で共同配送を受注して物量を確保し、倉庫間の輸送を満車にすることを目指す。
賞味期限は「年月」表示に
菓子を含む食品業界は賞味期限が古い順に出荷/納品する必要がある。従来の賞味期限は年月日まで表記することが一般的だったが、流通の効率化や食品ロス削減のため年月までの表示に切り替えることが推奨されている。年月表示に移行することで在庫のロット管理が容易になる他、日付単位のピッキング作業が不要になる。
栗山米菓では、品質保証体制や賞味期間を維持する改善を行った上で、可能な商品から年月表示に移行。2025年6月時点で総出荷量の51%(34品目)が年月表示になっている。今後は、年月表示の商品を10品目増やす。
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