AIを活用し「化学物質の特定および使用量の把握」をシステム化:製造現場向けAI技術
NSDは「化学物質の特定および使用量の把握」をシステム化し日鉄建材で本番運用を開始したと発表した。
NSDは2025年8月18日、「化学物質の特定および使用量の把握」をシステム化し、日鉄建材で本番運用を開始したと発表した。
化学物質は、「労働安全衛生法」や「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」の2つの法令によって管理が定められている。各法令で定められている化学物質の数は膨大で、今後も増える可能性がある。
日鉄建材の製造所/工場では、法令によって定められている化学物質の含有量を調査するため、製品/材料の購入先から安全データシート(SDS)を入手し、事業所単位で一覧表を作成して、使用量などの把握を行っていた。
同社では、各法令で定められている化学物質を調べる方法として、手作業でExcelの一覧表を作成し、それぞれの製品をチェックする方式を採用していた。そのため、該当法令を非該当と誤認することで発生するコンプライアンス違反のリスク、記入漏れ/再チェックにかかる時間など、作業性に課題があった。
こういった課題の相談を受けたNSDは、グループ会社であるNSD‐DXテクノロジー(NSD-DXT)と連携し、AI(人工知能)-OCR技術とNSD-DXTが独自に開発した抽出アルゴリズム、文書構造化技術を用いてシステム化を実現し、日鉄建材の大阪製造所(大阪府高石市)で2025年4月に本番運用を開始した。
今回のシステムは、厚生労働省や経済産業省が公開する化学物質情報(物質名など)を取り込むと、登録データから該当する含有物質が抽出され一覧が自動生成されるため、対象化学物質が増えても容易に確認が可能となった。
これらの実績を踏まえ、NSD、NSD-DXT、日鉄建材は今後、新システムの他の製作所への展開や、他業務に関する効率化も推進する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
積水化学型MIは超やる気人財が主導、配合設計の検討速度900倍など成果も高速で創出
本連載では素材メーカーが注力するマテリアルズインフォマティクスや最新の取り組みを採り上げる。第1回では積水化学工業の取り組みを紹介するデータを秘匿しながらベイズ最適化の計算ができる技術を開発
産業技術総合研究所は、データを秘匿しながらベイズ最適化の計算ができる技術を開発し、アプリに実装した。取得したデータを分割、分散させて保管し、データを復元することなく計算に利用できる。半年勉強するだけでもマテリアルズインフォマティクスは可能、TBMの挑戦
本連載ではメーカーが注力するマテリアルズインフォマティクスや最新の取り組みを取り上げる。第3回は環境配慮素材「LIMEX」と再生素材「CirculeX」を展開するTBMの取り組みを紹介する。JSRや出光はマテリアルズインフォマティクスのプロ人材をどのように育成したのか
本連載ではマテリアルズインフォマティクスに関する最新の取り組みを取り上げる。第4回は、国内化学メーカー向けにマテリアルズインフォマティクスのコンサルティング実績を積み重ねてきたEnthoughtを紹介する。MIの船出を後押しするデクセリアルズの伴走手法とは?
本連載ではマテリアルズインフォマティクスに関する最新の取り組みを取り上げる。第5回は、光学材料部品事業や電子材料部品事業を展開するデクセリアルズの取り組みを紹介する。