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材料開発期間を1年未満に短縮 秘密計算活用の新手法:マテリアルズインフォマティクス
EAGLYSと三井物産ケミカルが提供する秘密計算技術を活用したマテリアルズインフォマティクスソリューション「EAGLYS ALCHEMISTA」を用いて、三菱ケミカルと大塚化学が新規材料の開発期間を大幅に短縮することに成功した。
EAGLYSは2025年7月28日、マテリアルズインフォマティクス(MI)ソリューション「EAGLYS ALCHEMISTA」を用いて、三菱ケミカルと大塚化学が新規材料の開発期間短縮に成功したと発表した。通常2〜3年かかる開発プロセスを、1年未満に短縮し材料サンプルの提供を実現したという。
EAGLYS ALCHEMISTAは、秘密計算技術を活用して安全に企業間のデータ連携を実現する他、企業間のデータを用いてAI(人工知能)モデルを自動生成し、企業間横断で高精度なMI予測を可能にする。
三菱ケミカルと大塚化学は、2024年7月からEAGLYS ALCHEMISTAを活用。企業間の機密データを保持したまま連携、分析が可能になったことで、リードタイムの削減と効率化を達成した。
これまで材料開発の現場では、情報漏えいリスクを回避するために定量的データの共有が難しく、連携が限定的だった。秘密計算によって物性目標に基づいた具体的なデータのやりとりが可能となり、定量的な予測や議論を通じて迅速な開発を達成した。
この事例は、今後の材料開発における企業間連携の在り方を変える可能性を示すものとなる。MI技術の本格的な産業応用への道を開くものと期待されている。
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