オリンパスは2025年度の業績予想を下方修正、FDAの警告と関税が響く:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
オリンパスは2026年3月期第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比12.1%減の2065億円、営業利益が同39.6%減の165億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同38.3%減の89億円で減収減益だった。
FDAからの警告
輸入警告の解除にはFDAによる再査察を終える必要があるが、現在までにFDAに対するコミットメントの96%が完了したとしている。そのため、2025年度通期としての品質保証/法規制対応の改善計画「Elevate」の費用の見通しは据え置いた。
オリンパスは2022〜2023年にFDAから警告書を受け取っている。警告書では医療機器報告(MDR)要件および品質システム規制の違反が指摘された。ただ、適切な試験と文書化など品質と性能を保証するための要件が満たされていないことや、MDRの手順を策定していないこと、期限内にMDRを提出しなかったことから複数回にわたって警告を受けていた。
これを受けて2023年度から始まったElevateでは、3年間で600億円を投資し、FDAからの指摘に対する是正と品質改革を一体となって進めている。
2025年6月27日にも会津オリンパスが製造する一部の医療機器にFDAが輸入警告を公表した。対象商品は一部の気管支鏡、腹腔鏡、尿管腎盂鏡と内視鏡洗浄消毒装置で、米国での売り上げはオリンパスの連結売上高の1%だとしているが、FDAが新たに通知するまでは米国に輸入できなくなる(販売済みの商品は引き続き使用できる)。
FDAは「オリンパスによる品質システム規制違反が依然として存在することを懸念している」とコメントしている。これに対し、オリンパス 社長のボブ・ホワイト氏は「FDAの輸入警告はさらなる改善と実行の必要性を示している。FDAの期待に応えるため、計画の対応事項に沿って迅速に取り組む」と語った。
2026年度以降は、患者の安全やイノベーションを支えるための持続的な品質マネジメント体制の強化に向けた費用を販管費として計上する計画だ。
2025年度半ばから新製品、「エンドルミナルロボティクス」も
2026年3月期第2四半期(2025年7〜9月期)以降は、成長に寄与する新製品を主要市場で発売する予定だ。また、品質改善計画Elevateの取り組みによる認可/認証取得の円滑化で、市場導入を加速させる。
内視鏡は体への負担が少ない方法として診断と治療に貢献している。オリンパスはファイバースコープやビデオ内視鏡を投入し、可視化技術と治療ソリューションを提供してきた。現在はデジタル技術やAI(人工知能)、エンドルミナル(Endoluminal:腔内)ロボット技術による内視鏡の高度化に期待が高まる。診療時間の短縮や専門技能への依存軽減、医師の負担軽減に寄与するためだ。オリンパスもインテリジェント内視鏡医療エコシステムを開発しており、最初の製品が2025年度半ばに発売される予定だ。
エンドルミナルロボティクスに関しては、Revival Healthcare Capitalと共同出資で設立した新会社「Swan EndoSurgical」でも取り組む。まずは消化器科の治療に重点を置き、エンドルミナルロボティクスの先進的なプラットフォームの開発と事業化を迅速に進める。また、モジュール型の管腔内サブシステムにより、複数の疾患領域や用途への展開にも対応する。
米国ではエンドルミナルロボット手術の市場規模が2040年までに20億米ドル(約3000億円)を超えると見込まれている。エンドルミナルロボット手術はより低侵襲な内視鏡下手術の普及に貢献するとしている。エンドルミナルロボティクスの優れた操作性や精密な関節動作、医師の作業効率最適化は患者にとってもメリットになる。
ホワイト氏は「事業運営の中で新たな強みを築く機会だ。強みによって基盤を強化し、成長を加速させる。単なる漸進的な改善ではなく、規律やスピード、影響力を根本的に高めることを目指す。業務の簡素化を実現する部門体制に移行し、事業の規律の明確化と迅速な意思決定を実現する。また、データに基づく実行により、リーダーシップの責任はさらに高める。コスト構造とリソース配分を最適化し、収益性の向上と付加価値が高い事業機会への集中を進める」と今後の展望を述べている。
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