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マイクロンのSSDはAIデータパイプラインをフルカバー、世界初PCIe Gen6対応品も人工知能ニュース

マイクロンは、世界初となるPCIe Gen6対応の「Micron 9650」をはじめ第9世代NAND技術を採用したAIデータセンター向けSSDの新製品について説明した。

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 マイクロン(Micron Technology)が2025年8月5日、オンラインで会見を開き、世界初となるPCIe Gen6対応の「Micron 9650」をはじめ第9世代NAND技術を採用したAI(人工知能)データセンター向けSSDの新製品について説明した。

 今回発表した第9世代NAND技術採用のAIデータセンター向けSSDは「AIデータパイプライン」を構成する各プロセスに最適な性能を持つ製品をそろえたことを特徴としている。なお、AIデータパイプラインのプロセスは、PCやスマートフォン、IoT(モノのインターネット)をはじめとするエッジからデータを収集する「Capture and Ingest」、収集した生データをAIモデル学習などに利用できるように変換する「Transformation」、AIモデルの学習を行う「Training」、学習済みAIモデルを用いて推論実行する「Inference」の4つに分かれる。

AIデータパイプラインの概要
AIデータパイプラインの概要[クリックで拡大] 出所:マイクロン

 まず、TrainingとInferenceに対応するのがMicron 9650だ。AIモデルの学習や推論実行を担うGPUなどのAIアクセラレーターに直接つながることから性能として帯域幅が重視されている。Micron 9650は、世界で初めてPCIe Gen6に対応することで最大28GB/sのシーケンシャル読み取り速度を実現した。これは、マイクロンや競合他社のPCIe Gen5対応品と比べて2倍の性能となる。また、シーケンシャル書き込み速度で14GB/s、ランダム読み取り速度で550万IOPS、ランダム書き込み速度で90万IOPSとなっており、これらの性能値も全て従来品を上回る。

「Micron 9650」と他SSDとの性能比較
「Micron 9650」と他SSDとの性能比較[クリックで拡大] 出所:マイクロン

 なお、Astera LabsのPCIe Gen6対応スイッチICを介して2台の9650 SSDと「NVIDIA H100 GPU」を接続した実証により、GPU側の帯域幅が28GB/sの2倍となる56GB/sを実現できることを確認している。

GPU側の帯域幅で56GB/sを実現
GPU側の帯域幅で56GB/sを実現[クリックで拡大] 出所:マイクロン

 次に、Capture and Ingestに対応するSSDの新製品となるのがデータ容量122TBの「Micron 6600 ION」である。帯域幅を重視したMicron 9650に対して、エッジ側とつながるMicron 6600 IONが重視したのは限られたスペースにより多くのデータを集積するための容量密度だ。

 第9世代NAND技術として、従来のTLC(トリプルレベルセル)と比べて容量密度が倍増するQLC(クアッドレベルセル)を初めて採用するとともに、ドライブのフォームファクターとしてより薄型のE3.Sを適用した。これにより、一般的な2Uサイズのサーバラックに40個のMicron 6600 IONを組み込める。データセンターの運用で一般的な36Uサイズのサーバラックではデータ容量は88.5PBとなる。なお、1U当たりのデータ容量は2.5PBであり、従来のSSDのフォームファクターであるU.2を用いた122TB容量品の1.5PB、3.5インチサイズで容量36TBのHDDを用いた場合の0.7PBを大きく上回る。

「Micron 6600 ION」は容量密度を重視
「Micron 6600 ION」は容量密度を重視[クリックで拡大] 出所:マイクロン

 データレイク用途で広く用いられるHDDとの比較では、AIデータセンターへの要求が高まっている省電力性能も強みになる。省電力性能の目安となるTB/Wの数値は、Micron 6600 IONは4.9TB/W(1ドライブ当たりの容量122TBの消費電力が25W)であり、36TBのHDDの3.6TB/W(3ドライブつなげたHDDの容量108TBに対して消費電力が30W)と比べて37%高効率となっている。また、2E(エクサ)Bのストレージ実装において、Micron 6600 IONは36TBのHDDと比べて1日に当たり最大3.4MWhの省電力が可能になるという。

 最後に、Transformationに最適なSSDとなる「Micron 7600」で重視したのが、低レイテンシ、ランダム読み取り速度、消費電力効率という大規模DB(データベース)におけるデータ処理で重視される3つの性能だ。

 SSDをストレージとして用いるDBで広く利用されているRocksDBの高負荷ワークロードにおいて、業界最高水準となる1ms未満と短い遅延時間を実現している。また、競合他社のPCIe Gen5対応SSDとの比較では、ランダム読み取りの場合で速度が最大21%、リクエストの99%が処理されるまでに要する最大時間である99%レイテンシが最大59%、消費電力効率が最大78%上回るという結果が得られた。また、書き込み中のランダム読み取りでも、ランダム読み取り速度で最大21%、99%レイテンシで最大76%、消費電力効率で最大79%上回ったとする。

「Micron 7600」は低レイテンシ、ランダム読み取り速度、消費電力効率を重視
「Micron 7600」は低レイテンシ、ランダム読み取り速度、消費電力効率を重視[クリックで拡大] 出所:マイクロン

 なお、Micron 9650とMicron 7600は既にサンプル出荷を開始している。容量122TBのMicron 6600 IONについては2025年第3四半期の後半にサンプル出荷を始める予定である。さらに大容量となるE3.Lフォームファクターを採用する245TBのMicron 6600 IONは2026年前半にサンプル出荷を始めるとしている。

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