VWのID.Buzzは商品攻勢の「最後のピース」、ミニバンと差別化図る:電動化
ID.Buzzは、1950年に生産が始まった「トランスポーター」にルーツがある。3代目までのトランスポーターの「タイプ2」とも呼ばれ、1960年代にはヒッピー文化の象徴の1つになった。多人数での移動はもちろん、商用バンやキャンパーとして安価に入手できることも、愛される要因だった。
2024年度の日本での販売台数が前年度比20.3%減の2万5633台と落ち込んだフォルクスワーゲン(VW)。しかし、「ゴルフ」をはじめとする最新モデルが販売をけん引し、2025年度に入ってからは6月まで3カ月連続で前年同期を30%以上上回っている。2025年7月下旬以降は、商品攻勢の最後のピースとなるEV(電気自動車)「ID.Buzz」の出荷も始まる。900万円近い値付けだが「競争力のある価格設定」だというピープルズカーはVWの日本販売の回復に貢献できるか。
ID.Buzzは、1950年に生産が始まった「トランスポーター」にルーツがある。3代目までのトランスポーターの「タイプ2」とも呼ばれ、1960年代にはヒッピー文化の象徴の1つになった。多人数での移動はもちろん、商用バンやキャンパーとして安価に入手できることも、愛される要因だった。
タイプ2の第3世代は1992年に生産を終了したが、その後もタイプ2をモチーフにしたコンセプトカーが何度か登場し、2017年にはID.Buzzのコンセプトが披露された。量産モデルが2022年に発表され、2年半が経過して日本にも導入されることとなった。世代を超えて愛されるクルマを作るというVWの思想を体現したモデルだとしている。タイプ2の歴史と、EVの新しさを併せ持つID.Buzzは、他にないユニークなモデルだとVWは位置付けている。
ID.Buzzは、仕事や趣味でクリエイティビティを発揮する人々をユーザー像として描いている。プロダクトの背景となるストーリーに共感したり、新しいテクノロジーに関心を示したりする層に提案していく。また、2台目、3台目として購入するユーザーだけでなく、メインの1台として購入するファミリー層も想定。VWに長く親しんでいる人だけでなく、ID.Buzzで初めてVWを知る人も多いと見込む。
日本ではミニバン人気が高いが、華美で強い存在感があることが重視され、ステータスを示す役割も強いとVWは分析する。ID.Buzzはシンプルで親しみやすく、自分らしさを表現することに寄り添い、日本車のミニバンと差別化を図る。
ID.Buzzの税込みメーカー希望小売価格は日本では888万9000円。ターゲット層や価格セグメントを検討した上で日本での価格を設定し、ドイツ本社から承認を得たという。欧州や北米でのスタート価格は日本円で900万円を超えるが、日本仕様でオプションのアップグレードパッケージを付けるとプラス70万円となる。ロングホイールベースの上位グレードは日本で997万9000円で、29万7000円のオプションパッケージが用意されている。また、2トーンの有償オプションカラーは24万2000円だ。
VWのEV「ID.シリーズ」は2019年に発売して以来、2024年までにグローバルで累計135万台以上を販売した。このうち「ID.3」が約50万台だ。2024年のVWのEV販売は38万3100台だった。
VWは内燃機関車と、PHEV(プラグインハイブリッド車)を含む電動車の2本柱で商品を展開する。日本だけでなく欧州でも同様で、伝統を好む人は内燃機関車を、テクノロジー志向の人は電動車を選んでいるという。ドイツではID.Buzzが若いファミリー層に人気だという。日本市場は新車販売に占めるEVの比率が小さいが、輸入車に限ればEV比率は小さくないと期待を寄せる。
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