脱炭素ソリューション国内市場、2040年には2024年比約6.4倍に:製造マネジメントニュース
富士経済は、脱炭素ソリューションビジネスの国内市場に関するScope別の調査結果を発表した。2040年の国内市場規模が、2024年比で約6.4倍の9兆4605億円に達する見込みだ。
富士経済は2025年7月11日、脱炭素ソリューションビジネスの国内市場に関するScope別の調査結果を発表した。2040年の国内市場規模が、2024年比で約6.4倍の9兆4605億円に達する見込みだ。
同調査では、Scope横断ソリューション9品目、Scope1(自社からの直接排出)ソリューション7品目、Scope2(他社から供給された電気や熱、蒸気を用いる間接排出)ソリューション7品目、Scope3(自社事業の活動に関連した他社の排出のうちScope2を除くもの)ソリューション3品目について最新の動向を分析。加えて、製造業や運輸業など10業種のCO2排出量予測や脱炭素ソリューション適用の有望業種についても調査した。
Scope1では、バイオ燃料や水素由来燃料などのカーボンニュートラル液体燃料が約7割を占めた。今後は、航空燃料分野においてバイオジェット燃料(SAF)の需要拡大も期待される。2030年以降は、カーボンニュートラルアンモニアや水素の市場も立ち上がるとみられるため、2040年には2024年比で20倍以上の拡大が見込まれる。
Scope2分野では、再生可能エネルギーや環境価値証書の導入が拡大することから、市場全体のけん引役になるとみられる。特にグリーン電力が約7割を占める見込みで、2030年度や2035年度をグリーン電力導入の中間目標とする企業が増えるなか、導入が進むと予測される。
Scope3分野は、今後の算定および開示の義務化による急成長が予想される。特に輸送、配送時のCO2排出量可視化支援サービスが注目されており、2025年以降は大手企業を中心に年間70〜100社の導入が見込まれる。2040年の市場規模は、2024年比で5.3倍の42億円に達すると予測した。
全てのScopeに関連したScope横断ソリューションは、現時点ではCO2算定ツールや脱炭素コンサルティングが中心となっている。脱炭素コンサルティングは、今後サービスの導入の一巡やユーザーの知見蓄積による縮小が予測される。一方で、2030年以降にはCCUS(CO2回収、貯留)技術の市場投入が見込まれるため、再び成長が加速する可能性がある。
CO2必要削減量(2013年の排出量と目標値との差分)への貢献度では、2024年度時点でのソリューションによる削減量は必要量の約13%にとどまった。一方で、2040年には約26%まで拡大する見込みとなっている。特にScope2関連の導入が寄与するとみられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
CO2排出量が不明な製品は選ばれない? 脱炭素対応が中小製造業の未来を分ける
中小製造業向けに「経営の見える化による利益率改善」の打ち手を解説する本連載。第3回は、製品のCO2排出量を示すCFP(カーボンフットプリント)への対応が中小製造業にも求められていることや、CFPの算定にツール活用が有効なことについて紹介する。環境問題への対応になぜSCMシステムが重要になるのか
サプライチェーンの問題に多くの製造業が振り回される中、SCMシステムでもさらなる進化が求められている。そのカギを握るポイントの1つである環境問題への対策について、Blue Yonder 最高サステナビリティ責任者のサスキア・ファン・ヘント氏に話を聞いた。脱炭素や品質などデータ共有の仕組みで主導権争い、取引条件が変化する2024年
製造業DXが進む中で、企業の枠を超えた形で自由なデータ流通を安心して行える「データ流通基盤」の重要性が高まっている。既に欧州などで動きは出ているが、2024年はその仕組み作りや主導権争いが進み、ある程度の形が定まってくる1年になる見込みだ。いまさら聞けない「スコープ3」
スコープ3(Scope3)とは? GHGプロトコルの概要からスコープ3を構成するカテゴリー、さらにはスコープ3の排出量削減の進め方までを分かりやすく解説する。製造業の脱炭素って本当に可能ですか? 欧州よりも積極性が求められる日本
国内製造業は本当に脱炭素を実現できるのか――。この問いに対して、本連載では国内製造業がとるべき行動を、海外先進事例をもとに検討していきます。第1回は脱炭素を巡る欧州と日本の「共通点」と「相違点」を解説します。いまさら聞けない「CO2ゼロ工場」
「カーボンニュートラル化」が注目を集める中、製造業にとっては工場の「実質的CO2排出ゼロ化」が大きなポイントとなります。本稿では「CO2ゼロ工場」のポイントと実現に向けてどういうことを行うのかを簡単に分かりやすく紹介します。