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乱流の円管内の流れと圧力損失の見積もりCAE解析とExcelを使いながら冷却系設計を自分でやってみる(12)(3/4 ページ)

CAE解析とExcelを使いながら冷却系の設計を“自分でやってみる/できるようになる”ことを目指す連載。連載第12回では、乱流の円管内の流れと圧力損失の見積もりについて取り上げる。

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乱流円管流れの圧力損失

 本連載の中でいろいろな計算式を紹介してきましたが、おそらくここでの圧力損失の式が最もよく使われると思います。

 圧力損失は、以下に記したダルシー・ワイスバッハ(Darcy-Weisbach)式で求めます(参考文献[1])。

式8
式8

 管摩擦係数は、図6に示すMoody線図から求めます。

Moody線図
図6 Moody線図[クリックで拡大]

 図中のεは、管内面の表面粗さを表しています。表面が粗いほど圧力損失が大きくなることが、この図から読み取れます。つまり、圧力損失を正確に見積もるには、パイプ内側の表面粗さを測定する必要があります。

 例えば、フッ素樹脂チューブの中心線平均粗さ(Ra)を測定したデータとして、接触針式粗さ計による値は0.06[μm]、一方でAFM(原子間力顕微鏡)による測定では8.8[μm]という値が、ネット上で紹介されていました。どちらも中心線平均粗さとして得られた値ですが、結果は大きく異なっています。

 ここで問題になるのは、どのような測定方法で得られた中心線平均粗さが、Moody線図におけるεに対応するのかという点です。これを知るには、Moody線図がどのような実験を基に作られたのかを理解する必要があります。

 過去の研究者たちは、まず砂を用意し、それをふるいにかけて粒径をそろえました。そして、その砂をパイプの内面に貼り付けて、圧力損失を測定したそうです。内面に貼り付いた砂は、おそらくきれいな1層ではなく、何層かに積み重なった状態だったと推測しています。

 こうした状態と、自身で測定した中心線平均粗さとが一致するかどうかを、慎重に吟味する必要があります。

 ラフな見積もりであれば、中心線平均粗さを使ってもよいのですが、正確な値を知りたいとなると、やはり実験が必要だと考えています。

 筆者は、実際に圧力損失のデータを取得し、流量などから管摩擦係数とレイノルズ数を求め、Moody線図上にその測定値をプロットして、それがどのε/dの線の上にあるかを調べ、ε/dを求めていました。

 土木工学とは縁遠い筆者が扱ってきたパイプのほとんどは、Moody線図における「滑らかな管」の線か、そこから少し上にある線上にプロットされる傾向がありました。

 式8から分かるように、圧力損失は流速の二乗に比例します。そして、流速は断面積に反比例するので、パイプの直径が少し変わるだけでも圧力損失がかなり変化することは察しがつきます。

 ここで、少し数値代入をしてみましょう。流量を4.5[m3/s]とし、Moody線図における滑らかな管の管摩擦係数を使います。図7に、直径と圧力損失の関係を示します。同じグラフですが、右図は縦軸が対数目盛になっています。

圧力損失の数値例
図7 圧力損失の数値例[クリックで拡大]

 直径が10[mm]から15[mm]に変わると、圧力損失がドカーンと小さくなることに注目したいと思います。直径を変えると、圧力損失は劇的に変わります。

 設計段階で「う〜ん。圧力損失が大きくてポンプを1ランク上げなきゃな……」と悩んだときは、パイプ径をほんの少しだけ大きくすると解決することがあります。

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