福岡の複合施設で有機半導体材料開発を加速 ベンチャーとの協業も推進:研究開発の最前線
日本曹達は、研究技術戦略「Brilliance through Chemistry 2030」に基づく新規事業創出の一環として、インキュベーション施設「いとLab+(いと・らぼ・ぷらす)」に研究拠点を開設した。
日本曹達(二ホンソーダ)は2025年7月22日、研究技術戦略「Brilliance through Chemistry 2030」に基づく新規事業創出の一環として、インキュベーション施設「いとLab+(いと・らぼ・ぷらす)」(福岡市西区)に研究拠点を開設したと発表した。
九州大学との連携を強化
同社のBrilliance through Chemistry 2030では、先端材料分野を新規事業のターゲットドメインの1つとして設定している。いとLab+では、有機半導体分野における材料開発、特に有機電界発光(EL)ホスト材料や有機薄膜太陽電池の電荷移動層などに注力し、成長市場における新事業機会の創出を目指す。
同施設は、研究施設や商業施設、店舗、賃貸で構成される複合施設だ。九州大学(福岡市西区)から徒歩10分程度の場所に位置し、大学が保有する高度な研究設備や評価機器を活用しやすい環境にある。日本曹達は九州大学の研究者との密接な連携により、先端材料分野における技術革新と製品開発の加速を図っている。特に、九州大学高等研究院 教授の安田琢磨氏と有機半導体や有機薄膜型太陽電池に関する共同研究を行いながら、次世代の有機半導体材料の開発を進めている。
同社は今回の研究拠点で、九州大学の研究者との共同研究に加えて、有機EL材料開発で実績があるスタートアップと協業も進めていく。パートナー企業は次世代有機EL材料の開発に強みを持っており、これまでの協業関係を生かしながら、特に蛍光青色に適合するホスト材料など、市場ニーズが高い材料開発を推進する。いとLab+が保有する設備の一部活用も予定しており、これによりスピーディーな研究体制の構築を目指す。
今後は、今回の研究拠点に研究員を配置し、九州大学の研究者とのディスカッションを通じて新規事業の有望手間を創出する。福岡市や九州大学OIP(OPEN INNOVATION PLATFORM)、九州大学学術研究都市推進機構(OPACK)などとも連携し、オープンイノベーションを推進していく。
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