検索
連載

日本は格差是正の再分配が不十分? ジニ係数の国際比較で見る所得格差小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(36)(4/4 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は家計の所得格差を表す「ジニ係数」の国際比較について紹介します。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

再分配効果の国際比較

 最後に、再分配による所得格差の是正効果についても国際比較してみましょう。図6がOECD各国の現役世代の所得に対する再分配効果を比較したグラフです。

photo
図6 2021年の再分配効果のジニ係数(18〜65歳)の国際比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者作成

 OECDの平均値が0.099であるのに対して、フランスが0.143とかなり高い水準であるのが分かりますね。米国、英国、イタリア、カナダ、ドイツなどは0.105〜0.115で平均値を超え、中程度からやや高めの水準です。

 日本は0.066で先進国の中では再分配効果のかなり低い国となるようです。

所得格差の特徴

 今回は、OECDの統計データから各国の所得格差について、市場所得と可処分所得、再分配による是正効果をご紹介しました。

 主要先進国の傾向で見ると、各国で所得格差が拡大しています。再分配前の市場所得では日本は所得格差が小さい方になります。ただ、各国が再分配により、所得格差が一定程度縮小しているのに対し、日本はその効果が低く、再分配後の可処分所得では所得格差が大きい方になっています。これは、フランスが市場所得の所得格差が大きく、可処分所得の所得格差がやや小さいことと対照的です。

 また、日本は算出の基本となる所得水準そのものが低いという特徴があり、その中でも格差が大きいということになります。働く人がしっかりと所得を稼げるような環境が整い、再分配も含めて誰もが安心して暮らせる社会に変化していくと良いですね。今回の統計データは、その余地が大きいということを示唆する結果でもあると感じました。

記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る