約23.7万個の電極で細胞活動を高精度に可視化するMEAシステムを開発:医療機器ニュース
ソニーセミコンダクタソリューションズは、約23.7万個の電極を配置したCMOS-MEAを活用し、細胞活動を高精細に可視化するMEAシステムを開発した。高密度での細胞活動データの計測、記録に対応する。
ソニーセミコンダクタソリューションズ(ソニー)は2025年6月3日、SCREENホールディングス(SCREEN)、VitroVoと共同で、約23.7万個の電極を配置したCMOS-MEAを活用し、細胞活動を高精細に可視化するMEAシステムを開発したと発表した。高密度での細胞活動データの計測、記録が可能で、神経や心臓領域の疾患、創薬研究への貢献が期待される。
CMOS-MEAは、相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)技術を応用し、センサーチップ上に配置した微小電極アレイ(Microelectrode Array)で細胞の電気活動を検出するデバイスだ。3社は今回、ソニーが開発中の高密度CMOS-MEAと細胞の電気的活動を計測するSCREENグループの技術を組み合わせ、細胞外電位を検出して画像データとして出力するMEAシステムを開発した。
同システムでは、細胞の電気活動のデータを元に、疾患と健常間の細胞の差異や化合物に対する細胞の反応を1細胞レベルで可視化する。これによりユーザーは、神経細胞が情報伝達する際に生じる細胞の発火をモニタリングしながら、その反応を計測、記録できる。
加えて、化合物評価向けに最適化したVitroVoのアルゴリズムや、操作性を追求した解析アプリケーションを実装。細胞の発火頻度などの解析結果を、迅速にモニター上に表示する。従来のMEAシステムよりも高密度な細胞活動データが取得可能になったほか、これまで計測困難だった実験結果を得られるようになった。
同システムを活用することで、動物実験の代替として新薬候補化合物のリスク評価や薬効評価の効率化、精緻な細胞活動データの取得による疾患研究への貢献が期待される。今後、同システムと評価方法の有効性検証や商用化に向けた技術開発を推進するため、SCREENがシステムの試験提供を開始する。VitroVoは、細胞の培養手順やカスタムデータ解析支援に関するコンサルティングを実施するほか、同システムの有効性を確認できる受託試験サービスも提供開始する。
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