日産リーフが全面改良、「効率至上主義」でEVの実用性高める:電動化(3/3 ページ)
日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」を全面改良して発表した。2025年秋に北米で販売を開始し、日本や欧州でも展開する。日米向けは栃木工場で、欧州向けは英国サンダーランド工場で生産する。バッテリーはAESC製だ。
クルマを大きくせずに広くする
空力優先だが、単調ではない起伏に富んだ豊かなデザインも実現した。また、居住空間や荷室を犠牲にせずに空力性能を高めた。
電動パワートレインには、モーターとインバーター、減速機を一体化した「3in1」を採用した。先代の電動パワートレインと比べて容量を10%削減して小型化を図りながら、モーターの最大トルクは4%向上させた。トルクの脈動を抑制するためのローターの斜め構造配置と、振動を抑える高剛性ハウジングの採用により、音振性能も改善している。
EV専用のプラットフォーム「CMF-EV」の採用に加えて、小型化した3in1の搭載や、HVACをモータールームに移動させることによって室内を広く確保した。先代モデルと比べて全長は120mm短くなったが、ホイールベースはほぼ同等だ。シートの骨格を見直して薄くしたことも室内の余裕に貢献している。
チーフビークルエンジニアの磯部氏は「路上駐車の多い欧州から、全長を4.4m以下に抑えてほしいと強い要望があった。日本でも全長が大きくなることは歓迎されない。その中でも室内を広くし、空力を改善したいという状況だった。CMF-EVの採用もあって、メカのスペースを小さくしてフロントオーバーハングを縮めることができた。全長やホイールベースを長くするというアイデアもあるが、クルマを大きくすれば重くなり電費に影響するし、ムダも出てくる。コンパクトな中でどれだけ改善できるかに挑戦した」と振り返る。
CMF-EVの採用によってサスペンションはフロントがストラット式、リアがマルチリンク式になり、快適性を高めた。路面に起伏や凹凸があってもフラットな乗り心地を保つ。ボディーは横方向の剛性を従来モデル比で66%向上させている。EVとして滑らかな加速をアピールしてきたが、右左折やカーブでの走りも滑らかにしたとしている。
英国向けはV2Gにも対応
運転支援システムでは「インテリジェントディスタンスコントロール」を新開発した。アダプティブクルーズコントロール(ACC)と似た機能だが、インテリジェントディスタンスコントロールではドライバー自身の操作で加速する必要がある。減速が必要な場面でアクセルペダルを離すと、インテリジェントディスタンスコントロールは先行車両の減速に合わせて回生ブレーキによって充電しながら滑らかにスピードを落とし、停止するまで制御できる。二輪車も検知でき、市街地でも扱いやすいという。
リーフの駆動用バッテリーからコンセントなどで電力を取り出して電源として利用できる「V2L(Vehicle to Load)」機能も充実させた。英国向けモデルでは「V2G(Vehicle to Grid)」にも対応し、住宅や家電だけでなく電力網にも電力を供給できるようになる。
日産自動車は英国で交流電源(AC)システムによるグリッド認証コード「G99」を取得し、英国の系統電源への電力供給が可能になった。自動車メーカーとして英国で同認証を取得するのは「初めて」(日産自動車)だとしている。V2G対応の双方向のAC充電器も提供する。V2G対応は世界各国に順次拡大していく。
新型リーフのインフォテインメントシステムには、「Googleオートモーティブサービス」を採用した。スマートフォンと同じ使い勝手のGoogleマップや、さまざまなアプリを車内で利用可能にするアプリストアを提供する。ルート設定後の充電計画やバッテリーの温度調整もGoogleマップを基にしている。
運転席周辺のスイッチ類は、ディスプレイから操作するものと、操作頻度が高い物理スイッチに分けた。物理スイッチは「黒子」と呼ばれるダークカラーのエリアに集約してスッキリと見せながら、使い勝手に配慮した。
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