日産リーフが全面改良、「効率至上主義」でEVの実用性高める:電動化(2/3 ページ)
日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」を全面改良して発表した。2025年秋に北米で販売を開始し、日本や欧州でも展開する。日米向けは栃木工場で、欧州向けは英国サンダーランド工場で生産する。バッテリーはAESC製だ。
車内の熱をとことん使い切る
新型リーフの走行可能距離は、さまざまな効率化の積み重ねによってバッテリー容量が大きい方のグレード「B7」で300マイルを達成した(米国のEPAモード)。同様の車型や価格帯で比較すれば「クラストップ」(チーフプロダクトスペシャリストの遠藤氏)だという。バッテリー容量が小さい方のグレード「B5」でも、先代モデルのバッテリー容量が大きいグレードと同等の走行可能距離を確保した。
走行可能距離に大きく貢献したのが空力性能の向上だ。Cd値(空気抵抗係数)は日米向けで0.26、欧州向けの一部仕様では専用のタイヤやドアミラーの採用により0.25を達成。飛行機の翼断面をイメージして、空気の合流ポイントを車両の後方に設定したという。
ホイールの開口部も空力性能のために最小化した他、アンダーカバーは凹凸を50mm以内に抑えた面積を示す「フラット率」を95%まで引き上げた。ジャッキアップポイントは取り外し可能なカバーで覆い、サスペンションのリンクにもカバーを取り付けた。フード先端やパンパーの形状最適化により、車両の四隅まで空力にこだわったとしている。使用時にポップアップするフラッシュドアハンドルも、空力改善に寄与している。
熱マネジメントシステムは先代リーフやアリアからさらに進化して、パワートレインまで統合制御する。初代リーフはHVAC(暖房、換気、空調)とパワートレイン、バッテリーは独立しており、暖房はPTCヒーターだった。次の世代では空調にヒートポンプを採用した他、HVACとバッテリーが連携して冷房をバッテリー冷却にも使用した。今回は「車内の熱をとことん使い切るシステムを目指した。車載充電器の熱も捨てない」(日産自動車 チーフビークルエンジニアの磯部博樹氏)とし、駆動用モーターや車載充電器、ラジエーターなども統合熱マネジメントの一部となった。例えば低温環境で普通充電を利用する際は、車載充電器の発熱を利用してバッテリーを加温する。バッテリーの熱は車室内の暖房にも活用する。
バッテリーの熱マネジメントは、ナビゲーションシステムで設定した行き先(急勾配や高速道路の有無など)に応じた制御も行う。走行抵抗が少ないルートであれば、エアコンではなくラジエーターでバッテリーを冷却するなど、路面の負荷を予測して冷却に使うエネルギーを節約する。充電中にはバッテリーの温度が上がるが、充電後のルートの走行負荷が低ければ冷却しすぎないようにし、バッテリーの電力受け入れ量を増やす。
充電の利便性向上
新型リーフのバッテリーは「ビッグモジュール」の採用によってエネルギー密度を向上させた。バッテリーは、セルを数枚重ねたモジュールを集めてパックに仕立てていくため、モジュール間を接続する必要がある。状態を監視するセンサーも必要だ。ビッグモジュールは、1つのモジュールにより多くのセルを入れることで配線やセンサーを少なくする。
熱マネジメントによる効率化の貢献もあり、新型リーフでは急速充電性能も改善した。バッテリー容量の多いB7では、15分の急速充電で走行可能距離250km以上の充電が可能だ。「横浜から青森まで800kmのドライブに行くとして、エンジン車でも3〜4回は休憩するだろう。15分程度の休憩を兼ねた充電で、ロングドライブにも対応できる」(チーフプロダクトスペシャリストの遠藤氏)。また、低温下で急速充電を使う際はプレヒーティング機能によって標準温度相当まで充電量を回復させる。バッテリーのプレヒーティングで、低温の環境でも先代リーフの2.25倍の走行可能距離を回復させることができる。
北米向けには北米充電規格(NACS)コネクターを採用する他、「プラグ&チャージ」を提供する。充電器を利用する際に、認証や支払いのためにスマートフォンやカードをかざす必要がなくなる。
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