自動運転トラックは酒類/飲料を高品質かつ安全に運べるのか、T2と大手4社が実証:物流のスマート化(2/2 ページ)
T2と大手酒類/飲料メーカー4社の物流子会社であるアサヒロジ、キリングループロジスティクス、サッポログループ物流、サントリーロジスティクスは、2025年6月9日から11月にかけてT2の自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証を行うと発表した。
大手酒類/飲料メーカー4社の物流子会社トップのコメント
今回実証を行う4社が事業を展開する酒類/飲料業界は、他業界に比べて輸送量およびトラックの運行数が多い。物流2024年問題によりトラックドライバーが不足する中で、特に酒類/飲料の需要が高まる夏はドライバーの確保が困難になる事態も予想されており、輸送能力の低下によって消費者への製品供給が遅れるリスクが高まっているという。今回の業界を挙げてのT2との実証は、今後の持続可能な輸送体制の構築に向けた取り組みの一つとなっている。
会見に登壇した大手酒類/飲料メーカー4社の物流子会社トップのコメントは以下の通り。
アサヒロジ 代表取締役社長の児玉徹夫氏
「物流2024年問題で2030年にはこれまでの30%以上輸送能力が下がると想定されている。当社もモーダルシフトや積載率の向上などの対策を進めているが十分とはいえない中、自動運転技術には大きな期待が寄せられている。今回の実証に4社共同で参画し、われわれが培ってきた酒類/飲料に関する知見を活用することで、自動運転技術の本格稼働に向け業界全体で極力していく」
キリングループロジスティクス 代表取締役社長の小林信弥氏
「出生率が急速に低下する中で、物流を担うわれわれにとってトラックドライバー不足という課題は深刻だ。今回の実証では、4社の知見を一つのテーブルに出してしっかりと膝詰めで話をしながら自動運転技術の実用化に向けた課題を洗い出していきたい」
サッポログループ物流 代表取締役社長の服部祐樹氏
「今後どのように技術が発展しても物を運ぶということはなくならないだろう。物流は社会インフラを支える大きな責務を負っている。今回の実証は1つのステップにすぎないが、次のステップに進められるようにスピード感を高めていきたい」
サントリーロジスティクス 代表取締役社長の高橋範州氏
「物流に関する課題は多数あって相関関係も強いため容易には解決できないかもしれない。商習慣を変える必要も出てくるだろうし、小売り、流通、そして消費者の理解を得るまでは相当に時間がかかるだろう。ただし、自動運転技術の導入はスピード感を持って進められれば経済効果も早期に見込める。今回の実証では、ビンや缶、ペットボトルなどさまざまな容器に入った重量物である液体を自動運転技術で輸送するので、しっかりとデータ収集していく」
今回の実証で重視するのは酒類/飲料製品の品質の確保である。自動運転トラックでは、ドライバーの運転とは異なる形で急ブレーキや急ハンドルなどの操作が行われる可能性がある。この運転操作の影響で、包装基材や容器の外装が傷ついたり、酒類/飲料の中身の状態が変化したりすることがあり得る。酒類/飲料の包装基材や容器は軽薄短小化が進んできたが、今後は自動運転を前提とした検討もスコープに入ってくるという。
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