超音波センサーの世界市場規模、2035年に1兆4179億円の成長を予測:組み込み開発ニュース
矢野経済研究所は、超音波センサーの世界市場に関する調査結果を発表した。自動運転システムでの併用や空中超音波センサーの需要拡大などを背景に、2035年には同市場が1兆4179億円規模に成長すると予測している。
矢野経済研究所は2025年5月13日、超音波センサーの世界市場に関する調査結果を発表した。超音波を使用して距離を測定する超音波センサーを対象とし、品目別や需要分野別の動向、参入企業の動向、将来展望などを明らかにした。
超音波を応用した製品は、超音波の情報信号を利用する機器やシステムである「超音波の通信的応用」と、超音波のパワーやエネルギーを利用する「超音波の動力的応用」に分けられる。現在の主流は「通信的応用」で、水中探索や医療、FA、車載など多様な分野に超音波センサーを用いた距離情報が使われている。
2023年の同市場規模は8127億円(メーカー出荷金額ベース)で、前年比108.6%となった。同社によると、2025年には9082億円に成長すると予測する。
注目トピックとして、車載用超音波センサーについて取り上げている。1982年にトヨタ自動車が導入して以来、主にバックソナー用センサーとして使われてきたが、その後自動ブレーキや駐車アシストにも活用され、2010年代以降はADAS(先進運転システム)や自動運転システムへの搭載が増えた。超音波センサーは逆光や汚れに強く、他のセンサーの弱点を補えるため、自動運転システムでは他センサーとの併用が進むとみられる。
また、2030年までには空中超音波センサーの開発が進み、車載用センサー以外の分野でも空中超音波センサーの新規需要が拡大すると見込まれる。
こうした背景から同社は、2030年の超音波センサーの世界市場規模を1兆1562億円と予測する。分野別では、空中超音波センサーが3803億円、超音波診断関連製品が3695億円、非破壊検査関連製品が2956億円、水中超音波関連製品が1108億円に達すると見込む。
さらに、2023年から2035年にかけて、4.7%の年平均成長率で全分野の製品が成長し、2035年には1兆4179億円規模になると予測している。
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