セメント製造時に排出されるCO2を再資源化、OA機器用ゴムローラーの充填材に:脱炭素
住友ゴム工業は、住友大阪セメントとともにCO2再資源化人工石灰石を用いてOA機器用ゴムローラーの開発に成功した。
住友ゴム工業(以下、住友ゴム)は2025年5月28日、住友大阪セメントとともにCO2再資源化人工石灰石を用いてOA機器用ゴムローラーの開発に成功したと発表した。同製品の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトの一環として行われた。
同製品の概要
OA機器用ゴムローラーとは、用紙の搬送、文字/画像の転写のために、コピー機やプリンタに用いられる部品の1つだ。
一方、これまで石灰石の主成分である炭酸カルシウムは、セメントやコンクリートをはじめ、多くの産業分野で物性改善などを目的に「充填材」として幅広く使用されており、ゴム製品の製造過程でも充填材として使用されている。
今回のゴムローラーで採用したCO2再資源化人工石灰石は、セメント製造プロセスで発生する排ガス中のCO2を、廃棄物に含まれるカルシウム源に鉱物固定して製造されたもので、住友大阪セメントの開発品だ。
この人工石灰石を材料に使用したOA機器用ゴムローラーは、既存製品と同等の性能を持つことが確認されている。CO2再資源化人工石灰石を充填材に使用することで、「CO2排出量の削減」と「埋立処分場の延命効果」にも貢献する。
「CO2排出量の削減」に関して、OA機器用ゴムローラーで使用するCO2再資源化人工石灰石は1kg当たり約420gのCO2を鉱物固定しており、住友ゴムが生産しているOA機器用ゴムローラー全てに適用された場合、年間で約36トン(t)のCO2排出量削減が見込まれる。このようにCO2再資源化人工石灰石は、それ自身がCO2を固定化しているため、「単に混ぜるだけ」で高度かつ高効率なCCU(CO2回収/利用技術)を実現する。
「埋立処分場の延命効果」について、現在、日本では埋め立て処分場の不足が深刻な問題となっており、廃棄物の減量/再資源化が急務となっている。今回の製品に用いられるCO2再資源化人工石灰石は、原料にカルシウムを含む廃棄物を再利用しており、廃棄物を減らすことで埋立処分場の延命に役立つ。
今後、住友ゴムでは製品への本格的な置き換えや量産レベルでの適用を目指す。タイヤ製品への適用拡大も検討していく。
なお、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」(会期:2025年4月13日〜10月13日)に設置された住友グループのパビリオン「住友館」内では、今回のOA機器用ゴムローラーが住友ゴムのブースで展示されている。
開発の背景
住友ゴムは、2021年にサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を策定し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ一丸となって推進している。7つのマテリアリティーのうち「気候変動」では、「CO2排出量の削減を推進する企業」をありたい姿に掲げ、2050年のカーボンニュートラル達成を目指している。
同社は、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル達成に向けた2030年目標を掲げ、循環型ビジネス構想「TOWANOWA」で掲げた取り組みを推進している。この目標に向けた取り組みの一環として、CO2再資源化人工石灰石を充填材として利用したゴム製品を住友大阪セメントとともに開発した。
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